第二百話・全ての真実（前編）

俺は憂樹に連れられて、小さなビルに入った。

職場に行くって言われたけど・・・、一体何の関係があるって言うんだろう。



「ここだよ」
「うん・・・」

憂樹はカードキーを使いドアを開けると中に入った。

中には男の人が二人と、女の人が一人いた。

女の人は・・・
真琴さんだった。

「あら、アキラもいるの？」
「あ、すいません・・・どうしても会いたくなっちゃって」
「別に良いよ。その方が話が分かりやすいし」

憂樹は三人の前に立つと俺の方を向いた。



「じゃあ・・・まさとには今までずーっと隠してた事を話そうと思うの。
　結果として、それが全ての答えになると思うんだ」
「・・・うん」

正直そう言われても全くピンと来なかった。
とりあえず憂樹の話を聞くしかない。
そうすれば分かるのかも知れない。



「じゃあまず私達の仕事から。
　簡単に言えば・・・
　私達は探偵をやってるんだよ」
「た・・・探偵！？」

そうなのか。

推理力が凄かったから、探偵みたいだ、と思った事は何度もあったけど
本当に探偵だったなんて・・・。

「ただね。探偵とは言っても推理小説に出て来るようなモノじゃないよ」
「ああ・・・、それなら俺も分かるよ。
　例えば浮気調査だとか人捜しをしたりだとか
　そういう仕事の方が多いって事だろ？」
「うん、それもあるんだけどね。
　私達がやってるのは、それよりもっと砕けた物なんだよね」
「砕けた物？」
「何でも屋と探偵の間とでも言うのかな。
　普通の人は『探偵』って聞くと敷居が高くて入れない事が多いみたいなんだよ。
　割と大した問題じゃないから探偵に頼めない、頼みづらい、って人を
　ウチで引き受けてる、なんて感じかな」
「へー・・・」

なるほど。
素人考えでしか無いけどそういうのがあってくれると助かりそうだ。



「で、彼女は・・・
　まさとは会った事あるよね」
「ああ・・・、うん」
「お久し振りです」

真琴さん。
うん、朝倉真琴さんだ。

「じゃあアキラ。
　自己紹介する？」
「はい」

アキラと言われた人は椅子から立ち上がった。

「はじめまして。君島彰と言います」
「はじめまして・・・工藤雅博です」
「彰はね、ハッカーだったんだよ」
「ハッカー！？」

ハッカーって・・・
犯罪者じゃないのか！？

「最初はウチのメンバーじゃなかったんだけど
　まあ、色々あってね。今は仲間として活躍中なんだよ」
「もうその話は止めて下さいよ憂樹さん。
　過去の話じゃないですか」
「・・・・・・」

その『色々』が気になる所だけど
今は聞いちゃいけない気がする・・・。

「で、彼はウチのリーダー」
「どうもはじめまして。
　橘川純と言います」
「はじめまして」

・・・あれ？この人とは
どっかで会った事があるような気がするんだけど・・・。

「あの・・・、どこかでお会いした事ありましたっけ？」
「さあ・・・？多分無いと思いますけど？」
「そう・・・ですか」

そう言えば以前、憂樹が風邪を引いて欠勤する時
会社に連絡をした事があったけど（第百二十九話・『最大の不覚』より）
そのせいかな・・・？

（※まさとは忘れていてジュンは嘘をついていますが
　実はまさとはジュンと会った事があります（第百六十五話・『救世主』より））



「で、これから・・・
　まさとにとっては衝撃的な話が続くと思うけど
　引き返すなら今の内だよ。聞く以上はもう止める訳にはいかなくなるんだから」
「・・・分かった。
　ちゃんと聞くよ」



一体何が話されるって言うんだろう・・・。

全く想像もつかないけど
俺にとっては・・・
これは聞いておかなければいけない。
避けてはいけない。

そんな話であるような気がした。



第二百一話につづく



※遂に明かされる真実！
次回は中編！
憂樹が語る『真実』に、まさとは・・・！？




　　　　　

テクノラティプロフィール