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様々な想いが交差する!3rdシリーズ『真実』編!!
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「憂樹って・・・、あいつらに会って平気なの?」
「何が?」
「何がって・・・
 憂樹、お父さんもお母さんも亡くなってるじゃないか・・・」
「・・・まあね」



そう。

憂樹は、両親を事故で亡くしてるんだ。

それを聞いた当時は、まだ憂樹の事を大して意識してなかった事もあり
気の毒だな、くらいしか思わなかったが。

ウチに居候をする事が決まってから詳しい事情を聞いたんだけど
事故で亡くなったのは一年くらい前。憂樹はまだ高校生だった。
ショックだった事もあり、しばらく一人暮らしをしてたらしいが
その生活費を工面してたのが・・・、総吉オジサンだったんだそうだ。

そして高校卒業後、しばらく総吉オジサンの所で暮らし仕事を手伝っていたが
どうしても東京でやりたい事がある、と強く主張した為に再び東京に戻る事になり
その際、ウチで居候をさせる事に決まったと言う訳だ。

憂樹が来たばっかりの頃は亜矢子にフラれた直後だったり、ただただ強くなりたいと思ってたりと
自分の事しか見えてなかったから・・・、その辺りの事情を聞かなかった。
いや、聞けなかったんだ。
単純に、田舎から出て来た、くらいの認識しか無かったから
しばらくして詳しい事情を聞いた時、驚きを隠せなかったんだよな・・・。



「あいつらの事だから・・・、両親がいないせいで大学にも行けず働いてる、とか
 そんな嫌味を言いそうな気がするんだよね」

・・・実際、俺は法事で会った時に親父がいない割によく大学に行けたな、と言われた事がある。
総吉オジサンには褒められたが、同じ事で嫌味を言われるとは思わなかった。
まあ、法事くらいでしか顔を合わさない奴らだし、すぐに忘れたけど。

「ああ、そう言う事ね。ま、十中八九、言うでしょうね」
「それが平気なのか、って話だよ」
「・・・別に。そんな事を言うのは精神年齢が低いからでしょ。
 そんな奴らに悪口を言われたってどうって事は無いよ。
 大体、それが嫌だからって拒否する訳にもいかないじゃん」
「そりゃそうだけど・・・」
「心配してくれてるの?」
「・・・まあね」
「ありがと。相変わらず優しいんだね」
「あ、いや・・・」
「大丈夫だよ。私だってそんなに弱い訳じゃないよ」
「それは知ってるけど・・・」
「それに今度はまさとだっているんだし、味方がいれば平気だよ」
「え・・・」

・・・ちょっとドキッとした。

「結局ね、お母さんもお父さんも死んじゃったのが運命なら
 そんな親戚がいるってのも私の運命なんだよね」
「・・・うん」
「前に言ったでしょ。私も女神に嫌われてるって」
「ああ・・・、あったね」
「それなら、その運命と戦うしか無い。運命に抗うしか無いんだよ。
 逃げたって何も変わらないんだから」
「そうだよね・・・」

今、憂樹が言った事は俺にも言える事だ。

今まで無力でしかない、弱い生き方しか出来なかった。おかげで好きな人にはフラれる一方。
それが俺の運命なのかも知れない。

でも、そんな自分を変えたいから「強くなりたい」と願い
憂樹について行く事を決めたんだ。

つまり俺も・・・
運命と戦うしか無い。運命に抗うしか無い。
そして今やっている事は・・・、そう言う事だと言って良いんだよな。



そんなこんなあって・・・、土曜日になった。出発の日だ。

場所は仙台。今から行けば、昼過ぎには着く筈だ。

「じゃあ、行って来るね」
「気をつけてね」
「お土産、買って来ますね」
「ありがとう。お願いね」
「月曜の夜には帰って来る予定だから」
「いってらっしゃい」



新幹線が動き出した。

仙台に着くまでは憂樹と二人っきりか・・・。
何か旅行に行くみたいでちょっと嬉しい。

「あ、そうだ。まさと」
「何?」
「あっちでは、『まさと』って呼ぶのやめるから」
「え、何で?」
「あいつらの事だから、そんな愛称で呼んでたら、からかわれるのは明白でしょ。
 私達より年上のくせに中身は子供なんだから」
「あ、まあね・・・」
「だから、わざわざそんなネタを提供するような事は事前に避けようって訳。
 いちいち気にするのもどうかと思うけど、まあ一応ね」
「なるほど」
「と言う訳で・・・、しばらくは名前で呼びます」
「はい」
「・・・雅博」
「・・・・・・」

何か照れるな。憂樹に名前を呼び捨てされたのは初めてだから
(こっちに来たばっかの時は『雅博君』だったし)。

「・・・返事してよ」
「あ・・・ごめん。何か照れくさくって」
「私だって、まだ慣れてないし何かムズムズするわよ・・・」
「はは、まあすぐに慣れるよ。お互いにね」

何か・・・、恋人同士みたいだな俺達。
こういう他愛も無い話を笑い合いながら出来るって事が
こんなに気持ちの良いモノだとは知らなかった。

憂樹と付き合えれば・・・、こんな話が日常で出来るようになるのかな。



しかし、そんな幸せも・・・。

ほんの一時のモノなんだと、すぐに思い知らされる事になる。

こんな他愛も無い話をする余裕さえ無くなってしまうんだから・・・。



つづく



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