第百四十話・二対四

総吉オジサンは一足先に部屋に戻った。

食堂には・・・、俺達だけになってしまった。

「参ったね・・・、まさか嘘つきパラドックスで来るとは」
「さて、どうするか・・・」

秀一達は困惑してるらしい。
これはそんなに難しい問題だったのか・・・？

とりあえず俺は、ホワイトボードに書いてある文を
持ってきたメモ帳に写した。



よし、出来た。
とりあえずこれをじっくり読んで・・・


「雅博！」

・・・また秀一達が来た。
いい加減にしてくれ。何度絡んで来れば気が済むんだホント。

「どうだ？出来そうか？」
「・・・今、考えてるとこだから」
「はは、お前にはこの問題の難しさ自体が分からないんじゃないのか？」
「絶対に分かってないよー。そんな顔してたもん」
「・・・・・・」

悔しいけど、そこは事実だ。
秀一達も、憂樹までもが困惑している。
つまりそれだけ難しい問題だと言う事なんだろうけど
俺にはイマイチその実感が湧いて来ない。

そもそも、みんなこの問題の事を知ってるんだろうけど
俺は・・・、知らないんだ・・・。

「ま、とりあえず頑張れよ。結果はもう見えてるけどさ」
「随分と自信タップリだねー、真哉」

・・・憂樹が話に入って来た。

「そりゃ、お前らに負ける訳が無いからなぁ」
「どうだかね。アンタらみたいに頭ガチガチ人間にそれが出来るの？」
「何だと？」
「この問題は、頭が良ければ解けるモノじゃない。
　それくらい分かってるんでしょ？」
「・・・！」

何だ、何の話をしてるんだ？

「それじゃあ何か、憂樹？お前達は勝つ自信があるってのか？」
「もちろん」
「ほう？」

な・・・！

勝利宣言・・・！？

「そっちは四人でやりなさいよ。私達は二人でやるから。
　総吉オジサンが言ってた、世の中は頭が良いだけじゃ通らないってのを
　私達が実践してあげるから」
「はは、『三人寄れば文殊の知恵』ってやつか？
　そりゃ多少の答えは出るかも知れないけどな。お前は大事な事を忘れてるぞ」
「あら、何？」
「こっちには、お前らよりも優秀な人間が集まってるって事さ。
　お前らは1+1で、せいぜい2か3くらいだろう？
　でもこっちは3+3+3+3ってとこだ。答えは12以上。差は歴然だろ？」
「あ～あ。下手に勉強が出来ると理屈めいた説明でウンザリするわね。
　と言うか、やっぱり分かってないのね秀一」
「何！？」
「数が大きけりゃ良いってもんじゃないでしょ。
　『船頭多くして船山に登る』って諺もあるじゃない」
「・・・！！」

・・・何だか凄い言い合いだ。
食堂が険悪な雰囲気で充満してるみたいで・・・。

「・・・ふん。まあ、ここでこんな言い合っててもしょうがないな。
　月曜の解答時間にどんな答えを出すか、が問題なんだから」
「あら、さすが最年長さん。大人な態度ですこと」

・・・憂樹も皮肉たっぷりな事を言うようになってる。
ちょっと怖い。

「じゃ、せいぜい頑張れよ」
「ばいばーい」

そして秀一達も、食堂から出て行った。



俺と憂樹も、部屋に戻って来た。

「・・・ごめんね、雅博。何かさっき嫌なとこ見せちゃって」
「ああ・・・、まあちょっと驚いたけど別に良いよ。
　むしろあれだけ言ってくれて俺もすっきりしたし」

俺は、あんな風に秀一達と真っ向から口喧嘩なんか出来ないもんな・・・。

「ま、売られた喧嘩って言うか・・・、ここに集まった時点で
　あいつらとはやり合う事になってたようなもんなんだし
　向こうも充分その気みたいだし・・・。
　こっちもとことんやってやろうじゃない」
「・・・そうだね。頑張るか！」



こうった以上、絶対に負けたくない。

何としてでもあいつらに勝ってやる・・・！



つづく



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