第百三十四話・複雑な事情

今度の週末は三連休だ。
月曜が祝日だし、土曜、日曜、月曜と。

その三連休に俺達は、ある親戚の家に行く事になった。

と言うのも・・・。



「ねえ、雅博、憂樹ちゃん。今度の三連休って暇？」
「え、俺は大学は休みだけどバイトがあるよ」
「私は事前に言えば大丈夫ですけど」
「ちょっと、総吉オジサンに呼ばれてるんだけど行ってくれない？」
「え！！」
「・・・！」

総吉オジサンって言うのは、俺の父さんのお父さん。つまりお祖父さんにあたる人だ。
憂樹は俺の父さんの妹の娘だから、憂樹もお祖父さんにあたる。

この人が・・・、かなり厳しい人なんだよな・・・。
凄く気難しい人で、俺はかなり苦手なんだ。
大学に入った時、挨拶に行ったんだけどメチャクチャ緊張したもんだ。
幸い、下手な事は言わなかったので何か怒られるとかは無かったんだけど。

「でも何で？法事とかでも無いのに」
「何か孫達の顔を見たいんだって」
「え、ちょっと待って下さい。じゃあ私達以外の人達も呼ばれてるって事ですか？」
「そうじゃないかしらねえ」
「な・・・！！」

総吉オジサン（お祖父さんだが、みんなこう呼んでいる）には六人も子供がいる。
その内の一人が俺の父さん、一人が憂樹の母さん。

つまり俺には憂樹以外にイトコが四人いる訳だ。
それぞれ一人っ子なので、これ以上はいなかった筈。

大して面識とかがある訳じゃないんだが・・・。

こいつらが、おそろしく嫌な連中なんだ。

四人とも、東京にはいないがそれぞれが有名な学校に進んでる。
中学の時点で私立、高校も大学も一流所らしい。
俺は大して面識も無いイトコの進学状況なんてどうでも良いから詳しくは覚えてないが
そんな話を聞いた事だけはある。

そのせいなのか・・・、プライドが高く嫌な性格をしてる。

俺は東秀大学でそこそこ有名な所だが、四人に比べれば下だろう。
高校もごく平凡な所だったし。

憂樹は、高校はどうだったか聞いてないけど大学に行ってないしな・・・。

俺達を見下してると考えてまず間違い無い。

「母さんは行かないの？」
「うん、子供達だけで来いって言ってるのよ」
「まあ・・・、それでなくても母さんは行き辛いよね」
「そうね・・・」

総吉オジサンの子供なのは父さんだ。母さんは血を引いていない。

父さんは・・・、俺が小学生の頃に母さんと離婚をして出て行ってしまった。
しばらく養育費だけは払ってたが、数年で連絡を絶ってしまい払わなくなったらしい。
その辺りの事情は総吉オジサンを始め、親戚中に知れ渡ったそうだ。

だから大学に入って挨拶に行った時、親父がいない環境でよく頑張ったな、と褒められたんだよな。
緊張で嬉しさを感じる余裕なんか無かったけど。

そんな事もあり、母さんは親戚の中では肩身の狭い思いをしてて
法事で集まった時なんかに気の毒に思ってたんだ。

（余談だが、法事には憂樹も必ず来てたらしい。って事はどっかで見掛けられた筈だが
　以前はお互いに意識も面識も無かったので全く何も無いまま終わってしまった訳だ）

「ま、呼ばれてるんなら行くしか無いでしょ」
「そうだよね」
「じゃあ、行って来てね。ちゃんと交通費は出すから」



・・・・・・。

そう言えば・・・。



俺は憂樹の部屋に行った。

「あのさ、ちょっと聞きたい事があるんだけど」
「何でしょう？」
「憂樹って・・・、あいつらに会って平気なの？」
「何が？」
「何がって・・・」



俺が何故、こんな事を聞いたのか？

それは、憂樹がウチに居候をする事になった理由に関係があったからだ・・・。



つづく



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