第百九十七話・背中を押されて

とにかく俺は、今まで藤井さんに話していない事も含めて全ての事を話した。

そうしないと、答えが出ないような気がしたからだ。



「そうですか・・・。なかなか複雑なんですね」
「それとね」
「はい？」
「藤井さんに・・・、ちょっと嘘をついてた事があるんだよ。
　そこを謝らないといけないんだ」
「え、何ですか？」
「俺、前に・・・彼女がいた、みたいな話をした事があったよね」
「えーっと・・・。
　ああ、ありましたね」
「実はそれ・・・嘘なんだよ。
　俺は今まで、誰とも付き合った事が無いんだ」
「え・・・！！」

藤井さんは目を丸くして驚いていた。

「そう・・・なんですか？ビックリしちゃいましたよ」
「いや・・・、典型的なモテナイ男なんだ実は」
「何で隠したんですか？やっぱり恥ずかしかったからですか？」
「そうだね・・・。いわゆる『彼女いない歴＝年齢』ってやつだからさ。さすがに言えなくて」
　藤井さんも・・・俺がこんな男だって知ってたら、告白してなかったでしょ？」
「そんな事無いですよ。驚きはしましたけど、意外だった、っていうだけですから。
　それに私、今まで付き合ってたかどうかとか気にしないですもん」
「そう・・・？」

本当に優しいな・・・。

それにしても、彼女がいない、とか
いなかった、とかって話をすると
「意外だ」と言われる事が多いな俺は・・・。



「じゃあ・・・、相談に戻りましょうか」
「うん・・・」
「今、聞いた時点での私の答えなんですけど」
「うん」
「・・・すいません。
　私にもどうすれば良いのか分からないです」
「え・・・」

分からない・・・。

やっぱり難し過ぎる問題なのか・・・。

「そっ・・・か。藤井さんでも分からないか」
「でも」
「え？」
「『こうするべき』って言う正解が分からないだけなんですよ。
　もし、私が工藤さんの立場ならどうするか、と言う答えなら話せるんですけど・・・
　それで良いですか？」
「もちろん！！」

それだけでも充分に参考になる。

「じゃ、お話しします。
　私なら・・・」
「・・・・・・」

俺は緊張しながら答えを待った。

「私なら、その人に告白しちゃいます」
「・・・！」

告白か・・・！

「それはどうして？」
「だって、もうどうにも出来なくなっちゃうんですから
　そうなる前に、告白をしちゃった方が良いじゃないですか。
　もしかしたら付き合ってくれるかも知れなくて
　それなら、離ればなれになってもまだ繋がりは出来るんですよ」
「そう・・・、だよね」
「工藤さんは、どうしてその人に告白しないんですか？
　と言うか、今までも」
「いや・・・、自信が無かったから。
　もっと信頼を上げてからにしたいと思ってたんだよね」
「でも、もうそんな余裕なんかありませんよ。
　これ以上は、信頼を上げようも無いじゃないですか」
「・・・そうだね」
「それなら、告白しちゃった方が良いですよ。
　例え断られても、自分の気持ちに決着がつけられるじゃないですか。
　想いも告げられずに中途半端に終わるのって
　めちゃくちゃ悲しいですよ？」
「・・・・・・」

確かに・・・藤井さんの言う通りだろうな。

今更、もっと信頼を上げたいとか自信が無いとか
そんな事を言えるような状況じゃ無くなったんだから・・・。



もう・・・
それしか無いか・・・。



「・・・ありがとう、藤井さん。
　そうしてみるよ」
「そうですか。頑張って下さいね」
「本当に・・・、ありがとう。俺なんかの為に」
「私こそ・・・、お兄ちゃんの為に力を貸して貰いましたし
　好きになった人なんですし・・・
　こんな事で役に立てたなら嬉しいです」
「本当に・・・、ありがとう・・・」



つづく

※次回、遂にまさと告白の時！！必見！！！



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