第百九十六話・最後の手段

俺はもう・・・、どうにも出来なかった。

とにかく、この現実を受け入れるしか無いのだろうか・・・。

そんなの・・・、絶対に嫌なのに・・・！！



こんな時、頼る友達もいない自分が情けない。

いつも憂樹に頼ってしまっているけど
今回は、その憂樹の問題なんだから憂樹に頼れる訳が無い。

俺は・・・、この最悪の問題を一人でどうにかしないといけない訳だ。

よりにもよって、こんな超難題を・・・。



自分の身を、命を盾に
「行かないでくれ。行ったら死ぬしか無い」なんて脅す訳にもいかないし・・・。

どうしたら良いって言うんだよ・・・！！
ちくしょう・・・！！！



一晩中悩み続け・・・
遂にと言うか、やっとと言うか、俺の頭に一つの策が浮かんだ。



でもこれは・・・
本当はやってはいけない事だろう。

人として、そして男として、許される事では無いと思う・・・。
本当に『最後の手段』だと言えるだろう。

でも俺は、他に手段が無かった。

綺麗事こそが自分の生き方だと言った事があるけど
そんな生き方を変えなければいけない程、追い詰められていて余裕が無かった。



もう・・・、やるしか無いんだ。

俺にはこれしか無いんだ・・・。



無理矢理にでも自分を納得させるように
俺は何度も何度もそう呟いた。

なりふり構っていられない・・・。

やるしか無い・・・。

やるしか・・・。



「・・・こうして工藤さんと話すの、久し振りですよね」
「そう・・・だね」



その最後の手段と言うのは・・・
藤井さんに相談する事だった。

藤井さんは、俺より恋愛経験が豊富だから
何か良い解決豊富方法が浮かぶかも知れない、と言う
完全に人任せの方法なんだが・・・。



しかも。

俺は藤井さんから告白されたけどそれを断っている。

他に好きな人がいるから、と。

それなのにフッた相手の相談に乗って欲しいと頼み
更にその内容は、断る原因になった『他の好きな人』の事なんだ。

こんな事、最低最悪の男がやる事だと分かってはいる。



でも・・・



「工藤さん、また元気無いですね」
「あ・・・いや、ちょっとね・・・」
「また・・・好きな人と何かあったんですか？」
「・・・・・・」
「もし良かったら・・・私が相談に乗りましようか？」
「え・・・」

やっぱり踏ん切りがつかず、藤井さんを前にしても迷っている所に
こんな事を言われてしまった。

そう言われてしまったら・・・
もう「お願いします」と言わずにはいられなかったんだ・・・。



「藤井さん・・・」
「はい？」
「どうして・・・、この事の相談に乗ってくれるの？
　言ってみれば、藤井さんを悲しませる原因になった話じゃないか。
　藤井さんにしてみれば百害あって一利無し、になるじゃないか」
「そんな事ありません」
「え？」
「前にも言ったじゃないですか。
　私は・・・工藤さんに幸せになって欲しいんです。
　まだ恩返しも出来て無いですし」
「え・・・それはもう終わったんじゃないの？」
「ご飯をご馳走した事ですか？
　私はあの程度じゃ恩を返し切ったとは思ってないですよ。
　実は、何かチャンスがあれば、また恩返ししたいと思ってたんです」
「そう・・・だったんだ・・・」

驚いた。

とにかく驚いた。

凄く律儀・・・、いや、健気だ。

改めて考えてみても
物凄く良い子だ・・・。



「何でも話して下さい。
　私も一生懸命、解決のお手伝いをしますから」
「ありがとう・・・」



つづく



COUNTDOWN..."4"





　　　　　

テクノラティプロフィール