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様々な想いが交差する!3rdシリーズ『真実』編!!
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俺は家に帰った。

憂樹の部屋の電気がついてる。帰って来てるんだな。

藤井さんは機嫌が悪いだけだと言ってたし
俺から謝っちゃダメだとも言っていた。

それじゃあまあ・・・、何もしないでおくか。

ちょうどどうしていいのか分からなかった所だ。
やる事は同じだけど、理由があるのと無いのとでは全然違うのでいくらか気が楽だ。

どうしていいか分からない為、理由も無く何もしないのは
何も出来ないと言う事だ。

それより、機嫌が直るまでそっとしておくと言う意味で何もしないのは
ちゃんと理由があり、一応行動が出来ている事になるから。

まあ、藤井さんの勘が当たってればの話なんだけど
そこは信じてみるか。

ふと思った事だが、俺って憂樹の事になると弱くなるな・・・。
藤井さんにまで頼るなんて、ちっとも強くなれてない。

まあ俺には無いモノを持っているからだとか
憂樹と同じ『女の子』であるとか
藤井さんの方が有利な事だったと言うのも大きな理由ではあるんだけど。



コンコン

・・・ん!?

「まさと・・・?」

憂樹だ!!!

「入って良いかな・・・。話があるんだけど・・・」
「良いよ、開いてるよ」

ドアが開いて、憂樹が入って来た。

おそろしく悲しい顔をしてる・・・。今にも泣き出しそうだ。
憂樹のこんな顔、初めて見た。

「まあ・・・、座りなよ」
「うん・・・」
「どう・・・したの?」
「昨日とか今朝とか・・・、冷たい態度取っちゃってごめんなさい」
「ああ・・・、その事?」

藤井さんの言った通りになった。
向こう(憂樹)から謝りに来る、と。
しかも「ごめんね」ではなく、「ごめんなさい」と言う辺り
真剣に謝っている事が分かる。

「あんな風に言うつもり無かったんだけど・・・、ちょっとイライラしてて・・・。
 心にも無い事言っちゃったんだ・・・。本当にごめんなさい!」

憂樹が土下座をして謝ってる・・・。

「いや、俺はそんなに気にしてる訳じゃないから・・・
 そんな土下座までしなくても良いんだよ・・・」
「私の気が済まないから・・・」
「・・・・・・」

何か分かるな・・・。その気持ち。
俺も逆の立場だったら同じような事をしそうだ。

「とりあえず・・・、ちゃんと向き合って話したいからさ。
 顔を上げてくれよ・・・。頼むから」
「・・・じゃあ」

やっと上げてくれた。
何かいつもと立場が逆だな。

「今も言ったけど、本当に俺は気にしてないよ。そりゃ悲しかったけど」
「・・・うん」
「俺こそ、怒らせちゃったから謝った方が良いのかな、なんて思ったくらいだし。
 そりゃまあ、何で怒ってるのか理由が分からないから戸惑ったりもしたけど」
「そこは・・・、本当にごめんなさいとしか・・・」
「支障が無ければ・・・、何で怒ってたのか理由を教えてくれよ。
 また秋山のせいなの?」
「実は・・・、そうなんだよね」

やっぱりそうか。
ここまで憂樹を困らせたり苛立たせたりするなんて、俺も秋山が許せなくなって来た。

「馨が私に会いに来てね。まあちょっと・・・、色々とムカついたんだよ」
「悪口でも言ったの?」
「ううん、そうじゃないんだ。会いに来るやり方が卑怯だったって言うか・・・」

やり方が卑怯?どう言う事だ?
まあそこは聞かないでおくか。

「こないだ、ディズニーランドで馨がいたのも・・・
 やっぱり私を狙って来たらしいし」
「秋山がそう言ったの?」
「うん」

どうやったんだろう。
狙うと言っても相当難しいだろうに・・・。

「でもさ、狙って来たのなら何がしたかったの?
 あの時ってただ挨拶しただけじゃん。
 それなら偶然だったって方がまだ理にかなってると思うけど」
「それが馨のやり方なんだよ。昔からそうなの。
 敢えて自分の身を晒して接触する事で、相手にプレッシャーみたいなものを与えるの。
 動揺を誘うようなもんだね」

なるほど・・・。
確かにあの後の憂樹は大分困ってた。おかげで俺も大変だったんだ。
秋山の狙いとしては狙い通りだった、って事か。

「それで気を引き締めようとしたんだけど・・・
 ペースを乱されちゃったんだと思うけど
 何か思うように行かない事が続いちゃって、イライラしてたの」
「仕事って言ってたのは・・・」
「それは嘘じゃないよ。会社で残ったのを持ち帰ってやってたの」
「そうだったんだ」
「同僚にお説教までされちゃったよ・・・。
 ペースを乱され過ぎだって」
「そっか・・・」

藤井さんの言ってた「機嫌が悪いだけ」ってのは・・・
正確に言うと正解では無いけど、まあほとんど当たってるし良いか。

・・・ん?

「あれ、同僚の人も秋山の事を知ってるの?」
「・・・!・・・まあね」
「へえ」

そう言えば秋山は、憂樹と同じ畑の人間、同じ人から教わったと言ってた。
教えた人間が職場の人だと考えれば知っててもおかしくは無いか。

「『放っといて』なんて言っちゃって
 あの後すごく自己嫌悪になっちゃったんだ・・・。
 何でまさとにあたってるんだろう、って」
「まあ・・・、事情も分かったし、いつも通りの憂樹に戻ってくれたら
 俺も特にどうこう言うつもりは無いよ」
「・・・あのさ、まさと」
「何?」
「私の事、ひっぱたいて」
「え!!??」

突然、何を言い出すんだ・・・。

「・・・何で?」
「けじめだよ。まさとに対しての」
「だから俺は・・・」
「私が納得出来ないの!そうしてくれなきゃ、これから申し訳無くて
 今までみたいにまさとと接せないよ!」

・・・真面目過ぎるって言うか、頑固って言うか。

でもこれも、俺が逆の立場だったら同じ事をしそうだな。

「・・・分かった。そこまで言うなら」
「力の具合は、まさとに任せるから」
「え・・・」

また難しい事を言うなあ・・・。

もちろん本気でなんか出来る訳は無いんだけど
かと言って下手に手加減し過ぎると憂樹は納得しないだろうな・・・。

しょうがない。いくらか力は入れて・・・。

「じゃあ、やります」
「はい・・・」

憂樹は目を閉じた。

・・・緊張する。

「いきなりやるのもまずいし、声をかけるから」
「分かった」
「じゃあ・・・、せーの!」
「・・・!」

パン!

「うおっ!!!」

憂樹が・・・、吹っ飛んだ・・・!!

俺、そこまで力を入れたつもりは無いのに・・・!!!

叩いた俺の方が驚いて声を出してしまった・・・。

「おい、憂樹!大丈夫か!?」

やったのは俺なんだけど、そう言わずにはいられない。
思わず倒れ込んでいる憂樹の傍に近付いた。

「大丈夫・・・。ちょっと頭がクラクラするけど」
「お前、叩かれる時に力抜いてただろ!!」

そうでもしなきゃ、あんなに派手に倒れる筈が無い。

「だって・・・、痛くならなきゃ罰にならないし」
「もう分かったから!そんなに自分を責めないでくれよ!
 俺の方が辛くなっちまうよ!!」
「うん・・・、もう反省したから」
「とりあえず・・・、濡れタオルでも持って来るよ」
「大丈夫、自分で出来るから」

そう言うと憂樹は立ち上がった。
叩いた頬を押さえてる。

「まさと・・・」
「何?」
「これで明日から・・・、またいつも通りに接せるよね?」
「・・・当たり前だよ。もうお互い気にしない事にしようよ」
「ありがとう。じゃあおやすみなさい」
「おやすみ」



理由はどうあれ、女の子を叩いたのなんて生まれて初めてだ・・・。

憂樹には憂樹なりのけじめのつけ方があって
ああでもしない限り、自分が許せなかったんだろうな・・・。

憂樹は俺の事をいくらか認めてくれてるから・・・
だからこそ、あそこまで真剣に俺に謝罪したんだろう。

俺もそこまで真剣に謝られたら許さない訳にはいかない。
まあ最初から許すつもりだったし、そもそも許す云々自体どうでも良かったんだけど。

ただ言葉でどうこう言い合うんじゃなくって
ここまでやらないと納得出来ないのは・・・、俺も同じだろう。

だからこそ、憂樹の望むやり方を受け止め、それに応えるのが
俺の選ぶべき選択肢だった訳で、俺は憂樹の言う通りにした。
憂樹も、俺が真剣に謝ったら許してくれた事があったし
相手の気持ちを受け止めた上で、許す。そうでないと意味が無いんだ。
ただ許すってだけでも、難しい所があるんだな。

ただ相手が親しい人だから、好きな人だからあっさり許す。
そんなモノは問題外だ。

むしろそう言う相手だからこそ・・・
真摯に向かい合うのが正しい在り方なんじゃないのかな。

これでまた・・・、俺も大事なモノが身についたような気がする。



つづく



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