第三十八話・何故

俺はいつものように『treasure』をやっていた。
マッキーさんとレックスさんがまだ来ないので
フィンさんと話している。

『リュウさん』
「何ですか？」
『リュウさんって、東京だって言ってましたよね』
「ええ、そうですよ」
『今度、オフ会イベントがあるらしいんですけど行きませんか？』
「オフ会イベントですか」

・・・そう言えば始める時に憂樹が言ってたな。
ネットゲームはオフ会とかもあって
そこから親しくなって行く事もある、って。

「いつですか？」
『今度の日曜です』

じゃあ、バイトは休みだな。

『マッキーもレックスさんも行くそうですよ』
「面白そうですね、行きますよ」
『良かったです、一度リュウさんに会ってみたかったんですよ』
「そうなんですか？」
『リュウさんって凄く良い人ですから、どんな人なのかなって』
「はは、ありがとうございます」

良い人、か。
嫌な言い方だけど、俺のおかげでレベルが上がった事に
一応、恩は感じてるんだな。

「・・・マッキーさんやレックスさんとは会った事はあるんでしたっけ？」
『マッキーとはプライベートでも友達なんで、しょっちゅう会ってますよ。
　レックスさんともオフ会で何度か』
「あ、そうだったんですか」

実際に会ってないのは俺だけって事か。

『じゃあオフ会の情報、後でメッセージで送りますね』
「お願いします」



終わった後、俺は憂樹の部屋に行った。

「今度、オフ会イベントに行く事になってさ」
「ああ、たまにやってるからね」
「憂樹は行った事あるの？」
「何度もあるよ。最近は無いけどね」
「へえ」

さすがに積極的だな。

「主催って、ＴＣＣでしょ？」
「ああ、確かそれ」
「実は私の友達の友達が、イベントの主催者なんだよ。
　つまり、ＴＣＣの代表だね」
「え！」
「だから私も、主催の人達と友達になったの。
　随分前だけど、イベントの準備を手伝った事もあるんだよ」
「へー・・・」

凄い繋がりだな・・・。

「何で最近は行ってないの？」
「仕事とかで忙しいからね。前ほどのめり込んで無いし」
「・・・なるほどね」
「まあ、楽しんでらっしゃいな」
「でもさ、オフ会って何やるの？」
「雑談とか、他の人との交流とかだよ。
　ゲームのフリープレイもあるし」
「そうなんだ。俺、オフ会とか行った事無いからさ」
「あら、じゃあ貴重な体験が出来るじゃない」
「そうだね」

何だかんだで、結構楽しみになって来た。

なるほど。これがのめり込むと言う事か。



そして、当日になった。

俺は、勝手が全然分からないので
とりあえず会場の入り口の近くで待ち合わせをする事になった。

フィンさん、マッキーさん、レックスさんは駅で合流して三人一緒に来るらしい。
顔が分かってないのは俺だけだからな。

現在、入り口で待ってるのは俺だけ。
つまりここにいるのが『リュウ』になる訳だ。

その旨をフィンさんにメールで伝えた。
前回、携帯のアドレスを交換しておいたんで連絡は取れる。

ピピ

お、メールが来た。

『もうすぐ会場に着きます』か。

さて、遂にフィンさん、マッキーさん、レックスさんとご対面だ。
どんな人なのかな。

向こうから三人組が来る。
他にはいないから、あれで間違い無いな。



次の瞬間、俺は自分の眼を疑った。

こっちに向かって来る人達を認識出来た時に。

何で・・・、鈴木さんと山口さんがいるんだ・・・？



つづく



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