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様々な想いが交差する!3rdシリーズ『真実』編!!
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俺は朝起きると、ある事に気が付いた。

・・・憂樹にお礼を言うのを忘れてた。

鈴木さんに「みんなで一緒に食事に行こう」と誘われて
その事で連絡した時に言い忘れた。

だから、帰ったら言おうと思ったんだ。

でも歓迎会が終わった頃にはすっかり忘れてたし
家に帰って憂樹と話をしたのに思い出しもしなかった。
山口さんの事でアドバイスを貰う事しか考えてなかったんだ。

・・・いかんなあ。

無意識に自分の事を優先させちゃう癖があるのかな。
もしそうだとしたら、これは絶対に直すべき事だ。
いや、「もし」と言うより間違い無いだろう。

・・・気を付けなきゃ。

それに、憂樹に対して申し訳無い気がする。
助けて貰って何もしないようで後ろめたいとでも言うか・・・。

とにかく、朝飯が終わった後にでも
憂樹と話さないとな。

今は七時か・・・。

ん?今なら憂樹も起きてるんじゃないか?
いつも六時には起きてる筈だ。

俺は憂樹の部屋に行った。

「・・・憂樹?起きてる?」

また寝てる所を起こさないように
一応、静かにノックした。

「どうしたの?」

憂樹が出て来た。
やっぱり起きてたか。

あれ・・・?髪が濡れてるぞ?

「珍しいね、こんな時間から起きてるなんて」
「いや、ちょっとね。・・・話があるんだけど良い?」
「どうぞ」

俺は憂樹の部屋入った。
良い香りがする。シャンプーかリンスの香りだ。
憂樹はタオルで髪を拭いている。

「憂樹、風呂入ってたの?」
「そうよん」
「朝風呂ですか」
「身体を覚醒させるのに良いんだよ」
「へえ・・・」

本当にいろんな事知ってるなあ・・・。

「ところで話って?」
「・・・実はさ。バイト始める時に、覚え方を教えてくれただろ?」
「ああ、あれね」
「あれが凄い役に立ったんだよ。おかげですぐに覚えられた」
「あら、良かったじゃない」
「その事でお礼が言いたくてさ。ありがとう」
「いえいえ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」

俺も憂樹も黙ってしまった。

「そんだけ?」
「え、ああ、まあね」
「私にお礼言いたくて早起きしたの?」
「いや、そう言う訳じゃ無いんだけど・・・
 早起きしたのはたまたまだよ。何か目が覚めたんだ」
「ふーん」

憂樹が俺の方を見ている。
・・・憂樹がこんな眼になった時はヤバイ。
何かいろんな事を見抜いてる時の眼だ。

いや、別に隠し事をしている訳でも嘘をついてる訳でも無いんだけど。

「あのさ、まさと」
「はい」
「怒ってるとかじゃないから、正直に言って欲しいんだけど・・・」
「何を?」
「何か後ろめたい事とかあるでしょ?」
「・・・!!」

またか。
時々、リーディング(読心術)でも使えるのか、と思ってしまう。

「まあ・・・、あるかな」
「お礼を言い忘れたとか?」
「そう・・・だね」

何でそこまで分かるんだ・・・。

「やっぱりね。そんなとこだと思った」
「どうして分かったの?」
「行動が不自然過ぎるんだよ」

「え?」

「お礼言うなら何で昨日話した時に言わなかったの?って事。
 昨日言わなかったけど今言ったって事は・・・、言い忘れたのよね。
 それは簡単に推測出来るんだけど」

・・・そうだろうなあ。

「その忘れたって事に関して何とも思ってないんだったら
 こんな朝から言いに来る筈無いって思ったのよ。
 そんなの朝ご飯の後でも良いんだしね」
「・・・まあ、そうだね」
「じゃあ、まさとはどう思っているのか?
 まさとの性格から察するに、その事を後ろめたく思ってる。
 あるいは、それは自分にとって直すべき事だって思って
 戒めの意味ですぐに私の所に来た。
 それのどっちかだと思うんだけど・・・、どう?」
「どっちかって言うより・・・、どっちもだね」
「あ、そうなんだ・・・」

ちょっと驚いてる。
予想外と言うか、予想以上だったんだろうな。

「まあ、とりあえず・・・。
 そんな理由から、そう思った訳よ」
「なるほどね」

ホント、憂樹には下手な事とか出来ないよな・・・。
何でも見抜かれちゃいそうだ。

「で・・・」
「え?」
「何で私が、わざわざこんな事言ったか分かる?」
「・・・と言うと?」
「だってさ、今の私って明らかに嫌な奴じゃん。
 勝手に詮索して、後ろめたく思ってる所をほじくり返したりして」
「あ、まあそうかな」

別に嫌な奴だとは全く思ってないけど
普通の人ならそう思うのかな、やっぱり。

「でも私は、敢えてこんな事を言った訳ですよ」
「・・・何で?」
「指摘した方が、まさとが印象に残って覚えておくからだよ」
「え・・・」
「お礼を言って、それでお終い、じゃインパクトに欠けるでしょ。
 人間ってのはね、インパクトが強い事って言うのは
 印象に残って覚えておくものなんだよ」

・・・急に話が難しくなった。

「今みたいに、指摘されたほうがインパクトは強いでしょ」
「まあ、確かにね」
「じゃあ、もう同じ事は繰り返さないんじゃない?」
「・・・多分」

物凄い教育方法だな・・・。

って、教育!?何か違う気がする・・・。

まあ良いか。

つまり憂樹は・・・
俺が自分の失敗を戒めようとしてた事を見抜いて
それならばと、もっと効果的な事をしてくれた訳か。
敢えて指摘して嫌な奴になる事で。

「・・・ありがとう」
「どういたしまして」
「あのさ」
「ん?」
「憂樹、平気なの?そんな自分から悪者になる事なんて」
「別に。慣れっこだからね」
「慣れっこ?」
「相談に乗ったりしてると、時々嫌な奴にならないといけなくなるの」
「そうなんだ」
「それに、まさとなら別に嫌いにならないって信じてるから」
「・・・へえ」



俺は・・・、無理だな。

どんな理由であれ、人に嫌われるのは嫌だ。

泣きたくなっちまう。

そこは俺がまだ弱い人間だからなんだろう。

憂樹は・・・、本当に強いな・・・。



つづく



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