第四十三話・決意

俺は迷った結果・・・。

「俺、決めたよ」
「どうするの？」
「やるしかないじゃん。ここまで来たら、後には引けないよ」
「それで良いの？」
「半分は自業自得だしね。
　それに、今更やめるのなんて自分が許せないから」

・・・何か、クサイ事を言ってしまった。

「・・・・・・」

憂樹が何か考えてる。

「しょうがないわね。一応、アドバイスはしてあげるよ」
「ホントに？ありがとう！」

良かった。見捨てられたらどうしようかと思ってたんだ。

「レベル上げて行けば楽になるとかは？」
「それは関係無いよ。
　自分のレベルが高いと、それに比例して敵も強くなるから」
「・・・キツイなあ」
「とりあえず、余計な道具は全部置いて
　回復系の道具を持てるだけ持って行く事。
　・・・って、魔力回復なんか持ってっちゃダメだよ？」
「分かってる」
「後は・・・、多少贅沢してでも、出来る限り強い装備を揃える。
　事前に出来る事はそれくらいかな。
　本番で一番の決め手になるのは・・・やっぱりプレイヤーの腕よね」
「俺次第、って事か」
「まず敵の倒し方。倒す順番が違うと攻撃の受け方も変わるの。
　次に回復のタイミング。下手に使うとすぐ無くなっちゃうし
　かと言ってギリギリまで回復してないと、いきなりやられる事もあるし。
　そもそも、ウォーリアが生きてても
　魔法使いがやられたら終わりなんだからね」
「そうなの！？」
「当たり前でしょ。魔法使いの試練のイベントなんだから
　魔法使いが生き残らなきゃ意味が無いじゃない」
「・・・そりゃそうだ」
「だからこれは、『倒す』と同じぐらい『守る』って言うのが大事なんだよ」
「ただ勝てば良いってもんじゃない訳ね」
「そう言う事。一応、シーフも連れて行った方が良いわよ。
　回復と援護担当でね」
「・・・あ」
「どうしたの？」
「ウチのシーフの人、魔法使える・・・」
「え！？まさか『擬態』の魔法覚えさせたの？」
「・・・そう」
「何やってんのよ！それじゃ、まさとしか連れて行けないじゃない！」
「そうなるね・・・」

『擬態』って言うのは、シーフ専門の魔法で
これを使うといろんな物に変身出来る。
イベントを進め易くなる魔法で、別にそれを覚えなくても
話は進められたんだけど・・・。

鈴木さんが、覚えた方が良いと言って覚えさせたんだ。

まさかそれが、こんな事に繋がるなんて・・・。

「・・・まあ。そうなっちゃった事をアレコレ言っても仕方無いよね。
　と言う事はつまり、まさとに全てが掛かってる訳です」
「はい・・・」

今更ながら、プレッシャーがかかって来た。

「・・・まさと」
「何？」

急に憂樹が真剣な顔になった。

「一応、確認するけど・・・。本気なんだよね？」
「もちろん」
「それなら・・・中途半端はしないようにね。
　何でそこまで本気になれるのか私には分からないけど
　まあそこは、まさとなりの事情みたいなものがあるんだろうから
　別に追求したりはしません」
「はい」
「ただ、これだけは言えます。
　男ならやると決めた以上は、とことんやりなさい。
　絶対に勝つ事。分かった？」
「言われなくても・・・勝つつもりだよ」
「あら、感心」
「はは・・・」

憂樹に男の道を説かれてしまった。



そうだよな。確かに、何でここまでやれるんだろう。

山口さんの為にも負けられないから？

いや、違う。

負けられないって言うよりも

負けたくないんだ。

どうしてここまでやる気になってるのか・・・

自分でも分からないけど。

つづく



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