第四十八話・毅然

とりあえず俺は、ログオフしてゲームを終わらせ
憂樹と話をする体勢に入った。

「で、どうだったの？」
「結果は・・・、失敗しました」
「え、失敗したの？」
「・・・うん」
「意外だね。絶対にクリアするって思ってた」
「まあ・・・、途中までは順調だったんだけどね・・・」
「理由は？」
「タイムアウト」
「・・・へえ」
「？」

何だろう、憂樹がまた「見抜く時の眼」になってる・・・。

「それさ・・・、足引っ張られたでしょ」
「・・・！」

またか。毎度毎度思うけど、どうして分かるんだ。
理由は説明されるけど、そういう理屈が浮かぶ事自体、俺には難しい。

「まあ・・・そうなるのかな。結果的には」
「やっぱりね」
「何で分かったの？」
「あれだけ念入りに作戦立ててたのに失敗するなんて
　ある意味、そっちの方が難しいじゃない。
　あのイベントはハイリスクではあるけど
　難易度がめちゃくちゃ高い訳でも無いんだよ」
「そう・・・かな」
「って事は、作戦が上手く進められなかった。
　でも立てた本人である、まさとがそうなるとは考えにくい。
　ましてや死んじゃったとかじゃなく、タイムアウトなんだから
　つまり・・・白魔法使いの人が何かミスをして
　余計な時間を取られちゃったとかじゃないかなって」
「なるほどね・・・」

この一瞬でそこまで考えられるのが凄い。

「で、その事なんだけどさ・・・」
「ん？」
「ごめん・・・」
「？・・・何で謝るの？」
「いや、憂樹、言ってただろ？『絶対勝つ事』って。
　俺も勝つって言い切ってみせたのに
　それが果たせなかった訳だから」
「ああ、別に気にしなくても良いのに。
　ただハッパかけただけなんだから」
「そうなの！？」

・・・まあ確かに気合は入ったけど。
気にしてた俺が何か馬鹿みたいじゃないか。

「ただ、ちょっと一つ」
「え？」
「まあ言った事を果たせなかったと謝るのは良い事だけどね。
　ただ・・・どうして、まさとが謝るの？」
「いや、俺が失敗した訳だし」
「違うでしょ？もう一人の白魔法使いの人のせいもあるでしょ？」
「あ・・・、まあ・・・、そうと言えばそうだけど」
「まさと一人が悪い訳じゃ無いのに、何で一人で罪を被っちゃうの？」
「そりゃ・・・、連帯責任なんだし」
「連帯責任になってないじゃない」
「う」

さすがだ。こう言う『穴』にはすぐに気が付く。

「大方、守れなかった自分に非があるんだ。
　作戦が上手く行かなかった事に対処しきれなかった自分が悪いんだ。
　・・・そんな風に考えてたんじゃないの？」
「・・・そうだね」

「責任転嫁する勝手な人よりずっとマシだけどね。
　ただ、それが本当に良い事なのかってなると私は疑問だな」
「そうなの？」
「だってさ、それじゃ白魔法使いの人はどうなるの？何もお咎め無し？
　そんなのその人の為になんないよ。
　人はね、間違いとかをしたらそれを反省しないとまた繰り返すんだよ。
　でも反省するには自分が間違いをした事に気付かなきゃいけないけど
　周りが『しょうがない』とか言ってたら、反省なんかする訳無いでしょ」
「そう言われれば・・・、そうか」
「まさとのはね、一見『優しい』『お人好し』って言うのに見えるけど
　私に言わせればもっと下。『甘い』ってレベルだよ」
「甘い・・・」

久し振りに、心にズシンと来る事を言われた。

「『甘い』と『優しい』は違うよ。優しいのは良いけど
　甘いって言うのは自分の為にも相手の為にもならないから」
「そういうもんか・・・」
「その白魔法使いの人に毅然とした態度で注意とかした方が良いよ。
　後々パーティーとしての問題点になってくるし
　その人の間違いを正してあげる意味でもね」
「・・・覚えておきます」
「よろしい」



山口さんに注意した方が良いって事か。


・・・何か気がひけるなあ。



つづく



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