第四十九話・正しい事とは

今日はバイトの日だ。

今や、一週間どの曜日を取っても
鈴木さんと山口さんと会えるようになったから
話があれば、翌日になれば直接言える。

俺は昨日、憂樹に甘いと言われた。

・・・確かにな。自分でも思ったけど
失敗したのは俺のせいってだけじゃないんだ。

俺のせいでもある。
ただし、俺『だけ』のせいではない。

その部分を直視出来ないのは甘いんだろう。

俺がやった事は、山口さんをかばう事になるんだろうけど
それが本当に正しいかどうか。
憂樹が言っていたのはそう言う事なんだ。

間違いを正してあげる事こそが、本当の優しさだ。
そんな事が言いたかったんだろうな。

しかし・・・。

頭で分かっていても、実際に行動に移すのは勇気がいるな。



そうこうしてる内に、もう店に着いてしまった。

「おはようございます」
「おはよー」
「あ、おはようございます」

鈴木さんも山口さんもいる。
山口さんが休んでてくれないかな、とか思った自分が情けない。

とにかく、俺は仕事を始める準備をして店に出る。

「今って、忙しい？」
「ううん、全然」

そうか。それならチャンスだな。

「あの、山口さん」
「はい？」
「昨日の話なんですけど」
「ああ・・・、はい」
「残念だったね。まあ上げ直せば良いじゃん」

鈴木さんが重い空気にならないようにしてるのか
明るく話している。

でも、それで終わりって訳にも行かない。

「俺なりに、失敗した理由とか考えたんですけど」
「はい」
「山口さんは、何で失敗したと思ってますか？」
「回復出来なくて・・・、無駄な時間がかかったからじゃないかと」
「・・・そうですよね」

うわー、何か気まずい雰囲気になって来た。
でも今更止めるのもどうかと思うしな・・・。

「じゃあそれは・・・、どうしてそうなったんでしたっけ？」
「私が・・・、使いまくったからです」
「ですよね」
「え、何？くどっち、優希子のせいにするの！？」

『くどっち』て。
いつの間にそんなあだ名を考えたんだ。

「いや、別に山口さんのせいって訳じゃないよ。
　俺のせいもある。そこは認める。
　ただ、どっちがどうとかじゃなくて、二人の責任だって話だよ」
「そんなのひどいじゃん！優希子は、レベル1に戻っちゃったんだよ！」
「・・・それとこれとは関係無いだろ」

・・・いつも憂樹と話してるおかげなのか
筋が通ってない所はすぐに気付くようになった。

「俺が言いたいのは、そこは反省するべき所だって事ですよ。
　『しょうがない』で済ませちゃいけないと思うんです。
　それは今後の事を考えれば、絶対に直すべきです。
　パーティーの部分でも、山口さんの為にも」
「はい・・・」

何か泣きそうな顔してるな・・・。
俺もよくここまで言えたもんだと感心する・・・。

「そこまでキツい事言わなくても良いじゃん！！」
「いや・・・」

鈴木さんが噛み付いて来た。
俺は間違った事は言ってないと思うが・・・。

「待って、華穂ちゃん。工藤さんは悪くないよ。
　工藤さんが言った通りなんだし」
「え、でも・・・」
「すいません、工藤さん。今度から気をつけます」
「いえ・・・。分かってくれれば・・・」
「くどっち」
「え？」
「・・・ごめん、変な事言って」
「いや、気にしてないよ」

・・・とりあえず、これで良いのかな。



しかし、人に説教とかするのって大変なんだな。

・・・って事は、憂樹は平然とこれをやってるのか。

また一つ、憂樹の凄さを感じた気がした・・・。



つづく



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