第四十六話・決戦の日（後編）

参ったな。

洞窟の終盤辺りまで来たは良いけど・・・。
もう回復のアイテムが残ってない。

十分に持って来たし、タイミングも計算してたんだけど
山口さんが迂闊に使ってしまう事が多々あった。

『すいません、ちょっと怖くなっちゃって・・・』
「いえ、大丈夫ですよ」

俺としては、まだ使わないで行けると思ってても
山口さんが使ってしまう。
でもその直後の戦いで傷ついてしまい
結局、無意味な結果になってしまうんだ。

・・・まあ、無意味なんて言い方も失礼だけど。

明らかに作戦の遂行ミスだな・・・。
作戦自体に落ち度は無かったんだから（多分）。

って、そんな事を言ってる場合じゃない。

結局、山口さんと同じチームである以上は連帯責任だ。
どっちがどうとか言うのはおかしい。

とりあえず・・・、これからどうするかだな。

残り時間も10分を切っている。
慎重に行くべきなのか一気に行くべきなのか、それすら微妙だ。

ま・・・、行くしか無いんだろうな。

「山口さん」
『はい』
「今度敵が来たら、とにかく防御に徹して下さい。
　もう回復は出来ないですから、それしかありません」
『分かりました・・・』



確か・・・、洞窟の最深部に宝玉があって
それに触ればクリアなんだよな。

まだ着かないのか・・・。

心臓がドキドキ鳴ってる。

もう残り時間は3分弱しか無い。HPもわずかだ。

次に敵とエンカウントしたら・・・、ヤバイだろうな。

ダメだ、そんな事を考えたらいけない。
流れが悪い方向に向かって行く。
もうこのまま、最深部まで一気に行けると思った方が良い。

・・・そう思った途端、敵とエンカウントした。
世の中そんなに甘くないか。

『工藤さん、敵が・・・』
「やるしか無いですよ！」

そうだ、こうなったら倒すしかない。
やられる前にやれ、ってヤツだ。

・・・まずい！最深部に近いだけあって強い！！

HPが残り3・・・。次に攻撃を当てた方が勝ちだな・・・。

当たれ！！！

・・・・・・。

・・・・・・。

・・・勝った。

はは、何とかなるもんだ。ラッキーだとしか言いようが無い。

『勝てましたね』
「ええ、何とか」

・・・でも、今度こそ次にエンカウントしたら最後だ。
もう奇跡すら起こりようが無い。
この付近の敵では、一撃で倒せる可能性は間違い無く『ゼロ』だ。
俺が攻撃を当てて・・・、反撃されたら終わりだろう。
白魔法使いが一人で敵を倒せる筈も無い。
逃げる事が出来ないのも実験済みだ。

もうこうなれば・・・、幸運を信じるしか無いな。

行くか・・・。

・・・ん！？

しまった、時間が！今の敵に時間をかけ過ぎた！

『工藤さん、時間が・・・』

返事をする暇すら無い。
もうエンカウントがどうのと言ってる余裕も無い。

行くしか無い。とにかく進むしか無いんだ・・・。

だが・・・、時間は待ってはくれない。

ああ、無情・・・。



3、2、1・・・。



タイムアウト・・・。失敗だ。

世の中、頑張っても上手く行くとは限らない。

そんなに甘くない・・・、か。



つづく



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