第百七十七話・夢のメッセージ

・・・その夜、俺は夢を見た。



たまにある事だけど、夢の途中で「これは夢だな」と分かった。



その夢の中で、また憂樹が出て来た。



「ねえ、まさと」
「え、何？」
「またイッツ・ア・スモールワールド乗りたいんだけど・・・」
「あ、ああ。じゃあ行こうか」

どうやら俺と憂樹は、またディズニーランドに来ている設定らしい。
夢だと分かってたが別にどうこうするつもりも無かった。



「私さ・・・」
「はい」
「別に誰とでもディズニーランドに行く訳じゃ無いんだよ」
「・・・そうだろうね」

・・・いつだったか、憂樹はやたら可愛くなっている夢を見たが
どうも今回もそれに近いモノらしい。

それはそれで良い夢だから、覚めないで欲しい。



「私ね、前は彼氏がいたんだよ」
「・・・！！」

夢とは言え、ちょっとドキッとした。

実際に憂樹に彼氏がいたとしてもおかしくは無いけど
やっぱりそういう事を言われるのは良い気分では無いな・・・。

「じゃあ、前はその彼氏と一緒に来てたんだ」
「そうだね」
「その時も、よくイッツ・ア・スモールワールドに乗ってたの？」
「うん。何度もね」

妙にリアルな夢だな。
設定が現実に忠実って言うか。

「まさとはさ・・・」
「え？」
「やっぱり好きな人が出来て、付き合ったら
　一緒にディズニーランドに行くの？」
「・・・・・・」

これは・・・どう答えようかな。

夢なんだし、せっかくだから・・・。

「いや、俺は・・・」
「え？」
「どうせなら、憂樹と一緒に来たいよ」
「・・・そうなの？」
「だって俺・・・、憂樹の事が好きだから」
「・・・！！」

夢とは言え、あっさり告白してしまった。
妙にリアルなせいかドキドキしてる・・・。

「そうなんだ。嬉しいな」
「憂樹は・・・、俺の事はどうなの？」
「・・・ダメだよ」
「え」
「だってまさとは・・・、違う子と付き合うんでしょ？」
「・・・！！！」

藤井さんに告白された事まで反映されてるのか。
凄い細かさだな。

「いや・・・、それは・・・」
「私はね・・・、自分のせいで誰かが不幸になったりするのは嫌なんだよ」
「まあ、それは俺もだけどね」
「だから私は・・・、本当はまさとの事が好きなんだけど」
「え！！そうな・・・」
「でも」
「！？」
「私はまさとが好きだからこそ・・・、身を引くよ」
「え・・・」
「私のせいで、まさとが不幸になって欲しくないし。
　強くなる為に色々言ってあげる事は出来るけど・・・付き合うのはダメだよ」
「・・・・・・」
「だから、別の子と付き合った方が良いんだよ。
　・・・まさとの為にもね」
「俺の・・・為に・・・？」



・・・・・・。



そこで俺は目が覚めた。



・・・何だったんだろう。今の夢は。

妙にリアル過ぎた。実際に憂樹とこんな話をしたら
今の夢のようなやり取りになるんじゃないかという気になった。

むしろ、本当にそんな話を既にしてしまったような・・・
そんな錯覚すら感じる程だ。



昨夜、憂樹に「付き合って良いんじゃない」と言われ
憂樹の事は好きだけど、やっぱり無理なのか・・・と思っていたが。



・・・何故か今はそんな気はしない。

今まで通り、憂樹を好きな俺がいる。



今の夢が・・・俺を導いてくれたのかな・・・。



運命の女神に嫌われてる俺だけど・・・。

この時は、不思議な何かが力を貸してくれた。

根拠は無いけど、何故かそんな気がした・・・。



そして俺が・・・、自分の気持ちを再確認した以上は
次にやるべき事はもう決まった。


いや、最初から分かってた筈なんだ。

でもきっと、俺の弱さが迷いを生んでしまっていたんだろう。



俺の答えは・・・。



つづく



※次回は憂樹サイドストーリー！
まさとの応援をする憂樹、その本心は・・・！？




　　　　　

テクノラティプロフィール