第百七十二話・衝撃

「ねえ、まさと」
「何？」
「今度の日曜日、暇？」
「え！？日曜日？」
「うん。暇なら一緒に遊びに行こうと思ったんだけど」



もう・・・、まさとを好きな事は否定しない。



だからこそ・・・
この気持ちは捨てなきゃいけない。



でも、割り切る為に
最後に遊びに行くくらい良いよね・・・。



「ごめん！その日は用事があるんだ」

・・・！

「・・・そう」
「ホントにごめん。そのまた次の日曜日とかなら大丈夫だと・・・」
「それだと私が休めるか分からないんだ」
「・・・そっか」
「気にしなくて良いよ。いつもの事じゃん」
「まあ・・・、そうなんだけどさ・・・」

・・・そう。いつもの事だ。

いつもの・・・。

「ま、別の機会にね」
「うん・・・」

でも多分、その前にカオルとやり合う事になるだろうな・・・。

出来ればやり合う前に
気持ちの整理をつけたかったんだけど・・・。

・・・本当に、私も恋愛の女神に嫌われてるんだな。

もう・・・、許してくれないかな・・・。

まだ虐め足りないのかな？
あれだけ悲しい目に遭ったのに・・・！



そして、日曜日になった。

まさとは出掛けてしまい、私も外に出た。
家にいると、気が滅入りそうだったからだ。



・・・カオルはどんな勝負方法を言って来るつもりなんだろう。

どんなモノが来ても勝たなきゃいけない。

これは・・・、私だけの問題じゃない。
ジュンも、マコトも、アキラも、そして・・・。

私達の全てが懸かっているんだから。


絶対に・・・。

絶対に。



ピーピーピーピーピー



ん？電話だ。誰だろう。



・・・！！



「もしもし」
『あ、どうもユキさん』
「カオル、何の用？
　もう勝負方法を伝えたいの？」
『いえ、そうじゃありませんよ。
　ただちょっと、勝負の前に是非ともユキさんに見て貰いたい物がありまして』
「見せたい物？何よ？」
『今から、海浜公園に来れますか？出来れば大急ぎで』
「行けるわよ。すぐ行くから、１０分くらいで着くわ」
『はは、ありがとうございます。
　お待ちしてますよ』

・・・？

勝負の前に見せたい物がある・・・？
何を企んでるんだろう。

カオルの事だから何かを狙ってる筈だ。
充分、注意しておかないと・・・。



私はタクシーに乗り、海浜公園に着いた。

カオルには１０分くらいと言ったけど、それより早かった。
まあ、早いに越した事は無いだろう。



・・・・・・。



カオルはどこにいるんだろう？

電話をかけても出ない。
呼んでおいて自分は来てないなんて・・・。

まあ、良いや。
その内、カオルから連絡して来るだろう。
それまで歩いてよう。



静かだな・・・。
ほとんど人がいない。

出来れば、まさとと一緒に来たかったな。
こんな事で来るんじゃなくて。



・・・ん？



・・・まさとだ。

ちょっと離れてるけど、向こうにまさとがいる。

何でここにいるのかな？
声でもかけてみよう。



「ま・・・」



声を出そうとした、ちょうどその瞬間・・・



「・・・！！！」



まさとが・・・
女の子に抱き着かれた。



何が起きているのか、全く分からなかった。
考えようとしたけど、頭が真っ白になって動いてくれない。

ただ・・・
驚きながら、まさと達を見る事しか出来なかった・・・。



少しして、まさとがこっちを向いた。



「・・・・・・」



私は、その場にいられなくなり・・・。

逃げ出してしまった。



まさとが・・・
私じゃない、他の女の子と・・・。



・・・私、何を言ってるんだ。
別にまさとが誰と付き合おうが自由じゃないか。

山口優希子の時だって、応援してあげたじゃない・・・！！

そもそも、私はまさとへの気持ちを捨てるつもりだったじゃないか・・・！！！



でも・・・！！



でも・・・！！！



私は、そのまま泣き出してしまったが
走るのを止める事は出来なかった。



止めたら・・・。

悲しみに押し潰されそうな気がしたからだ。



つづく



※目撃してしまった憂樹！！！
次回、カオルが更に動き・・・！！！




　　　　　

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