第百六十九話・悲涙

※今回の話は、第百六十五話のラストからの続きになります



「ただいまー、っと」
「おかえりなさい、ジュンさん」
「おかえりー」
「・・・ユキ」
「ん？」
「さっき、まさとさんに会ったぜ」
「あら」
「・・・喧嘩してたぞ」
「へー？珍しいなあ。そんな性格じゃないのに」
「まあ、ヤバくなる前に止めといたけどな」
「それはどうも」
「・・・ただ、な」
「どうかしたの？」
「ちょっと気になる事があった」
「気になる事？」
「まさとさん・・・、秋山がどうのって言ってたぞ」
「・・・！！」

秋山・・・！？

「え、秋山って・・・。まさかカオルの事！？」
「多分な。まさとさんにちょっかいをかける奴で
　名前が『秋山』。これでカオルじゃないとは逆に考え難いだろ」
「カオルが・・・、まさとに喧嘩を売ったって事なの・・・？」
「いや、ちょっと違う。
　正確には、カオルがある男をけしかけたか、変な事を吹き込んで喧嘩を売るように仕向けた。
　会話から察するにこんなとこだろう」
「ジュンさん。その相手は、まさとさんと知り合いなんですか？」
「らしいな。まさとさんが女の子と知り合いで
　相手はその元カレみたいだ」
「・・・！」
「どう言う経緯でまさとさんとその元カレ野郎が繋がるかは分からないが
　お互いに面識はあったみたいだぞ」

まさとと知り合いの女の子がいて・・・
その元カレ・・・！！

「でもどうやって喧嘩を売るように仕向けたんでしょうね？」
「さあな。
　ただ、男の方はかなり勝手な言い分な奴だったから
　別れる羽目になった事を逆恨みしてた。
　で、その原因になったのがまさとさんだとか
　別れてすぐに別の男と仲良くなった。それが、まさとさんだった。
　そんな所なんじゃないか？
　カオルはそうやって心理面で誘導するのが上手いからな」
「なるほど・・・」
「・・・・・・」

・・・・・・。

カオルが・・・。



「どうしたユキ？顔色が悪いぞ」
「・・・ごめんジュン」
「え？」
「それ・・・、思いっ切り心当たりがある」
「何！？」
「どう言う事ですか？」
「ちょっと・・・、今日は帰らせて。もう今日の分は終わったし、明日話すから」
「まあ、それは構わないけどよ・・・」
「大丈夫ですかユキさん・・・？」
「大丈夫・・・」



女の子と知り合いで
勝手な言い分をする元カレ・・・。

そいつに喧嘩を売られた・・・。



まさとが・・・
この間、私に話した事だ・・・！！



カオルが・・・
遂にそんな事までして来た・・・！！



「ただいま」
「あ、おかえり」
「・・・！！」

喧嘩をしたのは聞いたけど・・・
ケガまで・・・してたんだ・・・！



「・・・どうしたの、その顔！？」

不思議がらないのもおかしいし、一応言っておこう。

「ああ、これ？帰りに不良に因縁つけられちゃってさ。ははは」
「因縁って・・・？」
「俺もよく分からないけど、気に入らないって言われてさ」
「・・・・・・」

カオルの事は言わないんだ・・・。
私を・・・、気遣かってくれてるんだね。
こんな私を・・・。



「まさと・・・」
「！？」
「大丈夫・・・？痛いでしょ・・・」
「え、あ・・・、いや。
大した事は無いから平気だよ」
「・・・まさと」
「え、あ、何？」
「もし困った事があったら・・・、遠慮無く私に話して良いんだからね。
　迷惑なんかじゃ無いしまさとを弱いとか思わないから・・・」
「・・・うん」
「・・・じゃ、着替えるから」
「うん」



私は部屋に入った。



その瞬間、堪えていた涙が溢れ出して・・・
立っている事すら出来なかった・・・。



ごめんなさい・・・
まさと・・・。



私の・・・
私なんかのせいで・・・！！



第百七十話につづく



※憂樹は事情を知っていた！！
次回、遂に『ユキ』が決断を・・・！！！




　　　　　

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