第百九話・再会

今日は火曜日。
思いっきり平日なんだが・・・。

俺と憂樹は、ディズニーランドに行く事になった。

と言うのは昨夜・・・。



「あのさ、まさと」
「何？」
「明日、ヒマ？」
「え、学校だけど」
「・・・休めない？」
「え！？何で？」
「昨日、大事な仕事が終わったって言ったでしょ？」
「はいはい」
「今日、職場のみんながね、仕事が終わったんだし
　明日休んでも良いって言ってくれたんだ」
「リフレッシュ休暇みたいなモノ？」
「うん、そんなとこかな。
　で、そんな訳だから・・・、ディズニーランドでも行こうかなって」
「え！！！」
「ほら、前から約束してたでしょ？・・・無理なら諦めるけど」
「大丈夫！大した授業無いし！！」
「ホント？じゃあ行こっか」
「オーケー、オーケー！！」

と、思わぬ展開になった訳だ。
まあこんな予想外なら大歓迎だけど。

正直、授業とかどうでも良く思える。
感心出来る事では無いだろうけど
憂樹を好きになってしまった今となっては
出掛けられるのなら、そのチャンスを活かしたい。

今までは一緒にいたり出掛ける事は普通で
特に何か感じてた訳でも無いけど
これからは意識しちゃうんだろうなあ・・・。



「あれ？今日のパン、いつもと違うね」
「面白いでしょ？ラピュタパンだよ」
「ラピュタパンですか・・・」

焼いたトーストの上に目玉焼きが乗ってる。
そう言えばこんなのが出てたな。

「何でまた、これを？」
「休んでまで遊びに行くんだから、その記念です」
「はあ・・・」

何て言うか・・・
気合いが入ってると言うか、楽しそうと言うか・・・
そんなに嬉しいのかな。

まあ、嬉しいって意味では実は俺も負けてないんだけど・・・。



そんなこんなで・・・。

俺達は東京ディズニーランドに来た。



「あー・・・・、やっぱり良いなあ・・・」
「何が？」
「ここの空気を感じるだけでワクワクして来るんだよね」
「そうなんだ」
「そうです」

前回に来た時も思ったけど、やっぱりいつもと違うな。
同じ笑顔でも雰囲気が全然違うように感じる。

「さて、まず何処に行こうか？」
「・・・イッツ・ア・スモールワールド行こうよ」
「え！？良いの？」
「もちろん」

ベタベタな手だけど、憂樹が一番好きなアトラクションなら
絶対に喜ぶと思ったんだ。
憂樹が喜んでくれるなら俺も嬉しいし。



「前に来た時より空いてるね」
「平日だからね」

それでも、それなりに人はいるが。

「前から不思議に思ってたんだけどさ。
　何で平日なのにこんなに人がいるんだろ？」
「そりゃ、誰もが土、日に休みって訳じゃないからだよ。
　例えば販売とか飲食関係の人は平日休みが多いでしょ」
「あ、そうか」
「それにここは日本中から、世界からも人が来るんだから
　今日が何かの記念日で学校や会社が休みとか
　私達みたいに休んだとか色々いるわよ。
　そう言う人達が集まればこれくらい普通にいくよ」
「なるほどね・・・」

考えてみれば、すぐに分かりそうな事だったな。
無知な所を晒してしまった・・・。



ん！？

「・・・！！？？」



何だ・・・！？今の・・・！！



「どうかしたの？」
「あ、いや・・・、何でも無いよ」

今、強烈な視線を感じた気がした。
しかも恐ろしく冷たい感情が込められていたような感じだった。

・・・・・・。

・・・気のせい、か？



「あー、楽しかった！」
「ホント、好きだね」
「言ったじゃん。大好きだよ」

前に来た時もこんなリアクションだったな。
そう言えば夢に出て来た時もこんな感じだったような・・・。
何度も乗ってるんだろうけど、飽きる事無く毎回楽しめるのか。

憂樹の意外な一面が見られたり楽しそうな所を見ると
無性にドキドキして来る。

・・・重症だな、俺。

そう言うのを感じれば感じる程に
憂樹への想いが大きくなって行くみたいで・・・



「こんにちは」



・・・え？

「ん？」
「え、今のって・・・？」

俺達に言った・・・のか？

その時、一人の男が近付いて来た。
間違い無く俺達の方に向かって来ている。

男はサングラスをしていたが
俺達の前に来るとそれを外した。

「御久し振りですね、柴原憂樹さん」
「・・・！！！」

・・・！？

憂樹が・・・、一目で分かる程、驚いてる・・・。

「アンタ・・・、何でここにいるのよ！？」
「いえ別に。ただの偶然ですよ、偶然」

知り合いなのか・・・？
『久し振り』って言ってるし・・・。

「嫌だなあ、そんな怖い顔しないで下さいよ。せっかく会えたのに」
「そう・・・、だね・・・」
「・・・？」
「久し振りだね、カオル。いや・・・、秋山馨クン」



・・・！！！

『秋山』・・・！？

確か・・・・随分前だけど
憂樹と一緒に推理サークルのイベントに行った時に
主宰の牧野さんがその名を出した・・・！！
（第二十三話・「解答」参照）

「ホントに久し振りですね・・・。あはは」



この人が・・・、秋山・・・！？



つづく



↓宜しければ押してやって下さい