第七十八話・最悪の出会い

「ねえ鈴木さん。あのガッティって人、何か俺の事が気に入らないの？」
『え、何で？どうかした？』
「いや、何かイベントで会った時に変な目で俺を見てたからさ」
『そお？気のせいじゃないの？だって初めて会ったのに
　気に入らないも何も無いでしょ？』
「まあ、そりゃそうだけど・・・」

でもあれは明らかに俺に嫌悪感を持ってる目だったような・・・。

『もしかしたら、私が倒れた事とか
　優希子がレベルをリセットされた事を聞いたからかな』
「え？それ話したの？」
『話したよ』
「ほほう・・・」

なるほどな。

山口さんの白魔法使いがレベル1に戻ったのは
「Wizard Trial」で失敗した為。一緒に行ったのは俺だ。

そしてこの間、鈴木さんが倒れた時に一緒にいたのも俺だ。

詳しい事情を聞かず、結果だけ聞いてれば俺のせいだって思うだろう。

本人達が気にしてないのは、心が広いから。
悪いのはリュウ。アイツが悪いんだ。

そんな風に考えてるのかも知れない。

もしそうだとしたら、短絡的もいいとこだ。
心が狭過ぎるし頭も悪い。

・・・俺が特に嫌いなタイプの人間だ。

「・・・鈴木さん、何であの人と仲良いの？」
『何でかな。あんま考えてないけど』
「ふーん・・・」

この様子だと鈴木さんの前では普通と言うか
極端な話、猫を被ってるみたいだな。

「あの人、明らかに俺の事を敵視してるよ。
　俺のせいで鈴木さんや山口さんが酷い目に遭ったって思ってそうだよ」
『考え過ぎだよー』
「・・・・・・」

ダメだ。これ以上言っても信じて貰えそうに無い。
それよりも俺がガッティを陥れようとしてる、なんて思われそうだ。

「・・・そう言えばさ、今日あの人と帰ったでしょ？」
『そうだよー』

イベントの帰り、鈴木さんはガッティと一緒に帰ると言い出し
山口さんはそれについて行ってしまった。

つまり、俺は行きは三人だったが、帰りは一人になってしまった訳だ。

だからどうと言う訳では無いが・・・
正直、何か面白くない。

「どこに行ったの？」
『ご飯食べて、その後にカラオケ行ったんだ』
「またカラオケかい。ホント好きだね・・・」

・・・いや。

そんな事よりも・・・。

「あれ？じゃあ山口さんもカラオケ行ったって事？」
『もちろん』

・・・俺でもまだ一緒に行った事は無いのに。
今日会ったばっかりの奴に先を越されるとは思わなかった。

いかんな。これは嫉妬か。
どうも面白くない。ぶっちゃけイライラする。

『あれ？どうかした？』
「ごめん、ちょっと親が呼んでるから切って良いかな？」
『そう？じゃあまた明日ね』
「ごめんね。バイバイ」

・・・嘘をついてしまった。

正直、これ以上話していると苛立ちが増しそうだった。

・・・憂樹と話がしたい。

さすがにこんな事は相談出来ない。
「心が狭い」と斬り捨てられるのがオチだろう。

でもせめて、話すくらいは・・・。

それなら心も晴れそうな気がする。



「憂樹？」

・・・・・・。

「あれ？憂樹？」

部屋のドアを開けてみた。
・・・開いてる。

真っ暗じゃないか・・・。いないのか？

「母さん。憂樹は？」
「あら、聞いてないの？大事な仕事があるから
　今夜は会社に泊まるって言ってたわよ」
「・・・そうなんだ」



・・・何だかなあ。

どうしてみんな・・・、俺を無視して話を進めるんだ・・・。

義務とかじゃないだろうけど・・・。

友達なんだから話してくれたって良いじゃないか・・・。



つづく



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