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様々な想いが交差する!3rdシリーズ『真実』編!!
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その日、午後に憂樹の荷物が届いた。

俺もいろいろと手伝わされたが、悪い気はしなかった。
何かをしている方が気が紛れる。少なくとも落ち込み続ける事は無い。

夕方になってようやく終わった。

しかし・・・。
憂樹には悪いけど、随分と特徴の無い部屋だな。
どこかのビジネスホテルの一室みたいだ。

「・・・憂樹。前の部屋もこんなだったの?」
「まあね。あんまり物が沢山あると落ち着かないから」

女の子の部屋、と言うイメージが湧きにくい事この上無い。
男の部屋と言っても通りそうな感じだ。
どう見ても普通の19歳の女の子の部屋じゃない。

「さて、雅博も憂樹ちゃんもお腹空いたでしょ。出前でも頼むけど、何が良い?」
「本当ですか?じゃあピザが良いです」
「あ、俺もピザで」
「はいはい、じゃあ好きなの選んで」
「えーっと・・・、コレで」

・・・早い。
頼む物が決まっていて、毎回それであるかのようだ。
憂樹ならやりかねない。

「まさとは?」
「え?あ、じゃあ同じので良いや」
「あら、珍しいわね。こんなの頼んだ事無いでしょ?」
「いや、たまには違うのも良いかな、と」
「分かった。じゃあちょっと待っててね」



と言うより、今の俺はピザがどうとかそんな事はどうでも良かった。

憂樹に・・・、あの事を聞いてみたかった。



数時間後、俺達は食事を終えて部屋に戻った。

・・・8時過ぎ、か。
今ならいけそうだな。

「憂樹?ちょっと話があるんだけど」

俺は憂樹の部屋のドアをノックした。

「開いてるから入って来て良いよ」

憂樹の声だけが聞こえた。
何かしてるのか?

部屋に入ると、憂樹はパソコンに向かって何かをしていた。
相変わらず速いブラインドタッチだ。

「ごめん、今ちょっと手が離せなくって」
「あ、じゃあまた後でも良いけど」
「大丈夫だよ。話聞くらいなら出来るから」

憂樹はパソコンの画面を見ながら言った。
打ちながら俺と話も出来るってのか。器用な事を・・・。

「で、何?」
「・・・昨日の事なんだけど」
「昨日のどれ?」
「強くなるには、って話」
「・・・まだ言ってるの?それなら、断った筈だけど」
「実はちょっと、憂樹の話を聞いてて変に思った事があってさ」
「変な事?」
「憂樹、俺に嘘ついてるだろ」

憂樹の手が止まった。

「どういう意味?」

憂樹がこっちを向いた。
・・・大丈夫だ。俺の考えは当たってる。その自信がある。

「パソコンは?」
「大丈夫。後でスピード上げれば良いんだから。それより続きを聞かせて」
「お前、俺を諦めさせる為にあんな事を言ったんじゃないのか?」
「・・・諦めさせる?」
「憂樹、俺に言ったよな?『私といると汚れる』って。
 つまりお前は、俺を汚させない為に
 わざと自分を悪く言ったんじゃないかって事だよ。
 俺が泣いてた時の気遣いも、面倒な事を避ける為じゃない。
 あれは本当に俺を気遣かってくれたんじゃないのか?」
「面白い事言うね。じゃあそう思った理由と、私が嘘をついてるっていう証拠は?」

証拠と来たか。相変わらず探偵みたいな奴だ。
だけど、こっちも負けてられない。

「証拠だなんて、小学生みたいな事言うんだな」
「そりゃ、理由も根拠も無しに嘘つき扱いされるのは心外だからね」

・・・なるほど。もっともな話だ。
さすがに憂樹は一筋縄じゃいかない。

「で?どうなのその辺りは」
「証拠は・・・無い」
「無いんだ。じゃあ理由の方は?」
「何となく」
「論外だね。それで人を嘘つき扱いするなんて失礼だよ」
「確かにそうかも知れないけど・・・。
 でも俺は憂樹が嘘をついてるとしか思えないんだ」
「感情に流されない方が良いよ。
 それは見た物や聞いた物をまともに受け止められてないから、そう思うだけ。
 まさとは私を美化し過ぎてるんだよ。だから真実を認めたくない。
 それだけの話だよ」
「違う!!」

俺は思わず声を荒げた。
さすがに憂樹も驚いている。


「確かに憂樹の事を美化し過ぎてるって言うのはあるのかも知れないけど・・・。
 でも俺は、憂樹がそんな冷たい奴だとはどうしても思えないんだ。
 昨日、俺を気遣ってくれたりしてくれたあの憂樹は・・・
 自分の為にやってるって顔じゃなかった」
「・・・美化してるからそう見えたんだよ。
 記憶なんて自分の都合の良いように作り変えるものだよ、人間は」
「そんな事は・・・無い」
「どうだか」

やっぱり駄目なのか。
理屈で勝たないと憂樹は頷かないのか。

でも・・・。

「憂樹・・・」
「・・・何?」
「俺は・・・汚れても構わない。むしろ、汚れた方が良いのかも知れない。
 だから・・・教えてくれ・・・。御願いだから・・・。どうすれば強くなれるのか・・・」
「私を信じるの?これだけ言われても」
「・・・信じるさ」

俺にはもう御願いくらいしか出来なくなっていた。

もしかしたら、全て憂樹の言う通りなのかも知れない。
でもそうは思いたくない。憂樹は・・・そんな人間じゃない。そう信じたい。

「・・・ふう」
「?」

憂樹がため息をついた。

「参ったなあ。まさか私を信じる人がいたなんて。
 今思えば・・・メールの仕掛けに疑問を持った時点で注意しとくんだった。
 やっぱ凄いね、まさとは」

少し笑いながら話している。
これは・・・何の笑いだ?

「そこまで言うなら認めるよ。・・・確かに、まさとの言う通り。
 私は、まさとに嘘をついたよ。私みたいになって欲しくなかったから」
「どうして・・・そんな事を」
「まさとが純粋だからだよ。
 まだ会ってほとんど時間が経ってないけど、いろいろ話して分かったんだ。
 そして私は、今みたいになるまでにいろんなモノを見てきたしやって来た。
 綺麗なモノも、汚れたモノもね。
 だから私はお世辞にもまともな人間とは言えないと思う。それは自分でよく分かってる。
 まさとにはそうなって欲しくない。私なんかに憧れて欲しくない。そう思ったんだ」
「だから自分を悪く言ったのか・・・」
「・・・ねえ、まさと。改めて聞くけど」
「何?」
「本当に私みたいになりたいの?」
「憂樹みたいって言うか・・・憂樹みたいに強くなりたい。それは本心だよ」
「私は人に何か教えるのは苦手だし
 そういうモノって教えて出来る事じゃないだろうから難しいけど・・・それでも良いの?」
「もちろん」

憂樹がクスリと笑った。

「私は厳しいよ。
 それについて来る覚悟があるなら、私もやれるだけの事はやってあげる」
「分かった・・・ありがとう・・・」
「すぐ泣くね。泣き虫なんだから」



また泣いちゃって恥ずかしかったけど・・・。それ以上に、俺は嬉しかった。



つづく



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