第二十七話・穴場

さて、『treasure』の登録も終わったし
今度はバイト探しだな。

でもなあ・・・。何をやれば良いんだろ。

とりあえず大学が終わった後、家に帰って『treasure』の確認だ。

・・・誘いはまだ来てないか。

バイト情報誌を買ってみたので、ざっと見てみる。

「うーん・・・、良いのが無いなあ」

前はウェイターだったからな。
すぐ近所に募集してる所があったので丁度良かったけど
今回はそうも行かない。

まあ、近所にあればそれがベストなんだけど。

「ただいまー」

憂樹だ。

また憂樹に相談・・・、という訳にもいかないよな。
さすがに頼り過ぎだ。

自分のバイトくらい自分で見つけないと。

「まさと、いる？」
「え？」

何だろう。

「どうかしたの？」
「ちょっと買い物行くんだけど、まさとも行かない？」
「良いけど」

買い物か。デートみたいだけど、憂樹はその気が全く無いからな・・・。
何せ本人の口からそう言われてるから・・・。

と言う訳で俺達は、駅の方に向かった。

「あれ？憂樹、そっちに行くの？」
「ちょっと面白そうなのがあるから見たいの」

大通りとは違う方に入って行った。
こっちもそれなりに人通りはあるけどそんなに賑やかでは無い。

「へー、こっちってこんな風になってるんだ。知らなかったよ」
「まさとの方が詳しいでしょ」
「いやー、大通りくらいしか行かないから」
「こう言う所に、穴場があったりするんだよ」
「何の穴場？」
「いろいろと」
「・・・へえ」

好奇心があるなあ、憂樹は。

「ねえ、雑貨屋さんがあるよ」
「あ、ホントだ」
「入ってみない？私、雑貨好きなんだ」
「良いね。俺も好きだよ」

なかなか良い感じの雑貨屋だ。
広くて綺麗だし、見てるだけでも楽しくなって来る。

「・・・・・・」
「？」

憂樹が店内を注意深く見てる。
どうしたんだろ？

「危ないね、このお店」
「何が？」
「お店の広さに対して、明らかに店員が少な過ぎだよ」
「そうなの？」
「見てみなよ。レジに二人しかいないでしょ？
　これじゃ万引きされ易いよ。補充しながら巡回する人がいなきゃ」
「でもさ、監視カメラとかあるんじゃないの？」
「あれは、やった人を捕まえてから出す物だよ。
　怪しいと思っても捕まえる前に逃げられちゃったらどうするのよ。
　その捕まえる人がいないんだよ、ここは」
「あ、なるほどね」
「万引き防止用のタグとかを付ける店もあるんだけどね」
「外に出すとブザーが鳴るやつ？」
「そう。後、無理に外すとインクが染み出て使えなくなるのとか。
　ここはそう言うのやってないんだね。雰囲気を大事にしてるのかな」

凄い事に気が付くな、憂樹は・・・。

「まさと、ちょっと入り口に行ってみよ」
「入り口？」

今度は何だ？

「やっぱりね」

憂樹が小声で話した。

「何が？」

俺も一緒に小声になってしまう。

「ほら。バイト募集してるよ」
「あ、本当だ」
「しかも急募ってあるよ。チャンスじゃない」
「ここでバイトしろって事？」
「良いお店だし、ここで働けたら最高じゃない」
「まあ、そうかもな・・・」
「急募なんだし、今行けば一発で採用だよ」

・・・・・・。

「よし！家に戻ろう。履歴書書いてくる」
「私は買い物があるもん」
「あ、そうか。じゃあ悪いけど、俺は先に戻るよ」
「気にしないで良いよ。頑張ってね」
「サンキュー！」

俺はそのまま家に戻り、途中で履歴書を買って帰った。

憂樹について行って良かった。思わぬ所で見つかった。

・・・まあ、まだ採用と決まった訳じゃないけど。



つづく



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