第二十五話・ゲーマー

とりあえず俺達は家に帰った。

「でもさ、憂樹がゲームやるってのには驚いたな」
「そう？」
「何かそう言うイメージじゃないから」
「まあ私の場合ゲーム好きって言うより
それをやる事で自分を高めるって意味の方が大きいからね」
「へー・・・」

ここでもか。
とにかく全てが鍛練の一貫になってるんだな憂樹は。

「あ、そうだ」
「え？」
「まさと、チェス出来る？」
「出来るよ」
「じゃあやらない？最近、ゲームでしかやってないから」
「良いよ。言っとくけど、俺は強いよ」
「あら楽しみ」

オセロ、将棋、チェス。
そう言うテーブルゲームの類いは実は強いんだ。
もしかしたら、憂樹に勝つチャンスかも知れない・・・。



「チェックメイト」
「う！」

甘かった。
おそろしく強い。
さすがと言うか、ここでもかと言うか・・・。

「うん、まあまあだね」
「まあまあか・・・」

くそ、悔しい。

「ねえ憂樹、将棋ある？」
「あるよ」
「実は俺、将棋の方が強いんだ」
「へー。じゃあそっちでやってみる？」
「是非とも」

嘘じゃない。
始めたのは将棋の方が先だったんだ。
本当にこっちの方が強い筈だ。



「王手。詰みだね」
「な・・・」

また負けた。
強過ぎる・・・。

「あのさ、じゃあ・・・」
「後はオセロしかないよ」
「・・・・・・」

こうなれば意地だ。
やるだけやってやる。



「はい、終わり。勝敗は確認するまでも無いよね」
「・・・はい」

一番酷く負けた・・・。
端は全部取られたし、明らかに八割は取られてる・・・。

「強いね・・・」
「まあねん」

強い。いや、強過ぎる。
憂樹が頭が良かったり、先を読んだり出来るのは
この辺から鍛えられたのかな。

「あのさ、また勝負しても良いかな。今度はもっと強くなってから」
「いつでもどうぞ」

悔しい・・・。
いつか絶対に負かしてやる！

「さて、それじゃあネットゲームの話に入ろうか」
「そうだったね」
「私がやってるのは『treasure』だよ」
「ああ、『treasure』なんだ」

『treasure』か。
かなり有名なとこだ。何度も広告を見た事がある。

「憂樹は、何て言うＨＮ使ってるの？」
「秘密」
「秘密かよ」

って事は、一緒にはやってくれないのか・・・。

「まあ、分かんない所は教えてあげるけど基本的には自分だけでやりなよ。
 そうした方が面白いでしょ」
「まあね」

相変わらずスパルタだ・・・。



憂樹は・・・。

この時の事をどう思っているのかな。

一緒にやっていればあんな事にはならなかった。

そう考えたりしたのかな。

まあ、別にどうでも良いけど。

そう、今更どうでも良いんだ。



つづく



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