第八十四話・言い訳

結局・・・、鈴木さんから電話は無かったし山口さんからも無かった。

何度もかけたし、二人とも俺がかけた事は知っている筈だ。履歴に残っているだろう。
それなら向こうからかけてくれても良い筈だ。「話す」と決まったんだから。
もちろん何か急用であるなら仕方ないが、それならそれでメールでもするべきじゃないのか。

朝になってもそれが無いと言うのは・・・。
完全に「約束を破った」って事になるんじゃないのか？

とりあえず・・・。
今日、『treasure』で集まるし言ってみるか。



『こんばんわー』
『こんばんわ』
「・・・・・・」

謝りもしないのか・・・。
まず昨日の事で何か言うかと思ってたんだけど・・・。

「ねえ」
『何？』
「何で昨日、電話出なかったの？」
『ああ、ガッティさんと話してたから』
「は！？」
『あ、私もなんです』
「え？どう言う事？」
『ちょっと話さないかって言って来たからさ』
「何時頃？」
『10時半くらいだったかな』
「それで？」
『優希子とも話したいって言うから『treasure』にログインして
　三人で話してたの』
「いや・・・、話してたの、じゃなくってさ」
『え？』
「俺、電話するって言ったじゃない。別に他の人と話すのは良いけど
　何で俺との約束を破る訳よ」
『だってあれは、守れたら守ろうって思ったから』
「ちょっと待てよ、それおかしいだろ？
　こないだ言ったじゃないか。
　ドタキャンは嫌いだし自分も守るようにするって。
　約束したならそれを守ろうとするべきだと思うって」
『でもそれは、くどっちが私達に話したいってだけで
　私達はそれを拒否する権利だってある訳でしょ？』
「それもおかしいじゃないか！確かにそこはそうだけど
　それでも『分かった』って了解しただろ！？
　だったらそれは立派な約束になるんじゃないのかよ？
　拒否するなら言われた時にするべきだし
　反故になったら事後連絡でもするのが筋ってもんだろ！？」
『そこまで言わなくても良いじゃん！』
「おかしいから言ってるんだろ！
　何で他人に約束を守らせる時は厳しいのに自分が守る時は甘いんだよ！
　『守れたら守ろう』って、じゃあ俺との約束は守ろうって思わなかったのか？
　ガッティとの約束は守れても俺との約束は守れないのかよ！
　順番で言えば俺の方が先なんだぞ！」
『工藤さん、すいません。確かにそうです』
『優希子、今日はもうやめよう！』
「え？おい、ちょっと待てよ！」
『華穂ちゃん！？』

・・・ログアウトしやがった。

『あの・・・、工藤さん』
「・・・良いですよ。山口さんも落ちても。
　俺に付き合ってたら鈴木さんも面白くないでしょうから」
『・・・はい。すいません』

・・・そして俺だけが残った、か。



喧嘩しちゃったな・・・。

そんなつもりじゃなかったんだけど
つい言葉を荒げちまった・・・。

でも俺は間違った事を言ってるつもりは無いんだけどな。
何せこっちが約束を破られた方なんだから。

でもちょっと・・・、ヤバイ気がする・・・。

どうしよう・・・。



つづく



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