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様々な想いが交差する!3rdシリーズ『真実』編!!
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「腕、もっとよく見てみる?」
「え?」

鈴木さんは腕全体が見えるようにしてくれた。

・・・傷痕が何本もある。

「これさ、正確にはアムカって言うんだよ」
「アムカ?」
「アームカット。腕を切るから」
「なるほどね」
「この手首のは、一番最初にやったやつ。
 やり方がよく分からなかったせいもあったのか
 気付いたらここ切ってたんだ」
「・・・気付いたら?」
「すっごい鬱状態になって、何か意識が飛んだ感じでさ。
 無意識で切ってたみたいなんだよね」
「そう言うものなんだ・・・」
「くどっちは、リスカとかしてる人ってどう思う?」
「正直に言って良いかな」
「もちろん」
「・・・あんまり考えた事は無いんだよね。
 今までそう言う人と関わった事自体が無いから。
 俺って、凄く平凡な人生しか送って来てなくって」
「まあ、そうだよね。どこにでもいるって訳じゃないし」
「でも・・・。別に悪く言ったりしないし思ったりもしないよ」
「何で?」
「中途半端な知識しか無いから、知ったかになるけど・・・
 それを好き好んでやってるって訳じゃないんでしょ?」
「・・・うん」
「人にはそれぞれ事情があるんだから
 それも考えないで、ただ『間違ってる』とか言えないよ。
 言うだけなら簡単だけど、その人の事を考えれば、ね」
「優しいんだね、くどっちは」
「・・・そう?」

それは嬉しいな。

「私さ、子供の頃に虐待されてたんだ」
「・・・!!」
「だから今の家族って、本当の親じゃないんだよ」
「本当の親じゃない・・・?」
「おじいちゃんと、おばあちゃんの家にいるの」
「へえ・・・」
「でもさ、愛情なんかロクに受けなかったから
 すっかり心が病んじゃって。今じゃ精神科通いなんだ」
「薬とか飲んでるの?」
「そうだよ。これがその薬」

鈴木さんのバッグから、錠剤の薬が出て来た。

「オーバードーズって知ってる?」
「いや・・・」
「『OD』とも言うんだけどね。薬を飲み過ぎちゃう事」
「そうするとどうなるの?」
「下手すると死ぬよ」
「な・・・」
「だからこれも、一度に飲むとヤバイね。
 前に一度、すっごい辛くなっちゃって
 それを消したくって一気に飲んだ事があるんだ」
「どうなったの?」
「意識不明になって、救急車で運ばれたらしいよ。
 目が覚めたら病院で寝てたんだ。
 胃洗浄ってのをやったそうなんだけどね」
「へえ・・・」

重い。物凄く重い。
完全に俺の知らない世界を聞かされている。

・・・いや、聞かされてるなんて言い方は失礼だな。
俺が聞く事を受け入れたんだから。

「・・・あのさ、山口さんはこの事知ってるの?」
「知ってるよ」
「やっぱ友達だから?」
「それもあるけどね。あの子、小学生の時いじめられてたんだって」
「・・・そうなんだ」

知ってるけど、ここは黙ってた方が良さそうだ。

「驚かないの?」
「え?あ、いや、もう既に驚きまくってるから
 今ならこれ以上何を言われても変わらないって言うか」
「あはは、そうだよね。それで優希子の話だけど
 私と似たような境遇でしょ。同じ虐められてた人間で。
 だから分かり合えると思ったんだ」
「なるほどね」

そうか。鈴木さんと山口さんが仲が良い理由はこれか。
憂樹の言葉を借りれば『心に闇を抱えてる』人同士で
意気投合したんだな。

「それでさ・・・」
「はい」
「私、仲良くなった人に隠し事するのって嫌いなんだ」
「・・・良い事じゃない」

・・・ちょっと心が痛むけどね。

「だから友達になった人には話してるんだけど・・・
 みんな離れて行っちゃうんだよね」
「話すと、引かれるって事?」
「うん」
「そりゃひどいね」
「だから気付くと、いつも一人ぼっちになっちゃってるんだよね」
「そう言えばレックスさんには話したの?」
「話してないよ」
「・・・それは何故?」
「イベントくらいでしか会わないからさ。
 ぶっちゃけ、仲は良いけどまだ話しにくいって言うか・・・」

多分、鈴木さんとレックスさんとでは
信頼感がそれほど固まってないんだろうな。

つまり・・・。

「もしかして、話すのが怖いんじゃないの?」
「・・・何で分かるの!?」
「いや、ただ何となくそう思って」
「やっぱり凄いんだね、くどっちは。めちゃめちゃ鋭いよ」

そんなに凄いのか。実感は無いけど。

でも、こんなので驚いちゃダメだよ鈴木さん。
憂樹はもっと凄いんだから。
もし何かの形で憂樹の凄さを感じたら腰を抜かすよ。

「それでね・・・。
 こんなのだけど、これからも友達でいてくれる?」
「何だ、そんな事だったんだ。
 もちろん良いよ。俺はそんな事じゃ嫌いになったり友達やめたりしないよ」
「ありがとう・・・」



なるほど。鈴木さんが今日誘ったのは
本当の自分をさらけ出す為に。俺に話す為にだったんだ。

さっきやたらと飛ばしてたのは・・・
無理矢理にでも不安を吹き飛ばしたかったのかも。

話すにしても不安があっただろうからな・・・。



つづく



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