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様々な想いが交差する!3rdシリーズ『真実』編!!
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何やかんやあったが・・・
遂に、遺言状の公開の日が来た。



「さて、ここまで来るのに色々ありましたが
 やっと遺言状を見る事が出来ます。
 これも、真壁さん。あなたが暗号を解いて下さったおかげです」
「いえいえ、とんでもない。お役に立てて私も嬉しいですよ」
「バアさん。真壁さんは俺が連れて来た事、忘れないでくれよ?」
「もちろん分かってるわよ、和馬。
 ・・・ところで美幸はどこに行ったの?」
「すぐ来るそうなので、先に始めてて良いって言ってましたけど?」
「そう。これ以上、先伸ばしにする訳にもいかないわね。
 さて、それでは金庫を・・・」

「ちょっと待った!」

「・・・!?」
「何だ?」

俺は、いきなり金庫の部屋の扉を開けた。
みんなが一斉に俺の方を見る。

「あなたは・・・」
「・・・遠野さん?美幸も・・・」
「あなた・・・、まだいたんですか?」

みんなが驚いているが、特に真壁と和馬が驚いているように見える。

「ええ、あいにく用事が残っているもので」
「・・・遠野さん。今、私達が何をしているかは御存知ですよね」
「ええ、もちろん。遺言状公開ですよね」
「では、その無礼はどう説明するつもりなんですか?
 いくら無駄足を踏ませてしまったとは言え、ここまでされては
 私達も黙っている訳にはいきませんよ」
「・・・確かに無礼です。そこはお詫びします。
 ですが、ほんの数分で良い。俺に付き合って頂けませんか?」
「私からもお願いします!」
「美幸・・・?」
「無礼なのは重々、承知しています。ですが、これはとても大事な事なんです。
 でなければ、椎名家の名誉に関わる問題になってしまいます」
「・・・それは穏やかじゃないな」
「美幸がそこまで言うとは・・・」
「・・・遠野さん。美幸」
「はい?」
「はい」
「一応、聞いてみますが・・・。これから行う事は、重要な意味を持っている。
 そう言う事なんですね?それはしなければいけない事だと?」
「そうなりますね。そして俺の話を聞いた後は間違い無く『聞いて良かった』。
 そう思わせてみせます」
「大した自信ね。そこまで言った以上は、それなりの事をしてもらいますよ」
「ちょっと待って下さい!」

予想通り、真壁が噛み付いて来た。

「こんな大事な場を土足で踏みにじるような事を許してはいけません!
 即刻、追い出すべきです!」
「土足か。確かにそうかも知れないな。
 じゃあこうしましょう。もし皆さんが納得出来なかった場合・・・
 この場で、腹をかっさばいてみせます」
「・・・!!!」
「な・・・」

みんな絶句してる。

まあ『切腹』なんて古臭いが、覚悟を見せるには効果的な言い分だからな。

「どうですか?ここまでしても、まだ不服ですか?」
「・・・良いでしょう。そこまでおっしゃるのであれば」

罠にかかった。

ここまで真剣に話を聞け、と言われたら今度は断る方が怪しく思われる。
もちろん、その真剣さを分かってもらう事が大事なんだが
覚悟を見せれば・・・そこは何とかなる。

「・・・では、ほんの数分ですが俺の話を聞いて下さい」

俺は、ゆっくりと話し始めた。

「まず俺達が今回の一件に関わった所からです。
 全ては俺と星野の所に美幸さんが暗号解読の依頼をした所から全てが始まりました。
 が。
 依頼を受け、椎名家に到着した時点で・・・、そこにいる真壁さんが暗号を解いていた。
 これは皆さんも御存知の事ですね」
「もちろんです。だからこそ私達は今、こういった場を設ける事が出来たんです」
「まあ、普通に考えれば『問題は解決。めでたしめでたし』
 と、行く所だったんですが・・・
 俺はそう言う訳には行きませんでした」
「何故です?」
「ある疑問を抱いたからです。そしてそれは、美幸さんも同じ事を考えていました」
「疑問?何ですかそれは?」
「何故、和馬さんは真壁さんを連れて来たか、と言う点ですよ」
「はぁ?俺?別に良いじゃねーか!暗号を解く為にやったんだから!」
「・・・確かに、普通に考えればそれで通る。しかし今回の一件は普通では通らない」
「どう言う意味でしょう?」
「和馬さんは、勘当状態。そうなれば貰える遺産なんて僅かの筈。
 そこは誰もが分かっている筈でしょう。・・・本人さえも。
 にも関わらず、何故か和馬さんは貰える事に執着している」
「・・・フン!そんなの見てみなきゃ分からねーだろ!
 もしかしたら、平等に分けてくれるかも知れないだろーよ!」
「それは一理ある。しかしそれなら何故、探偵まで連れて来た?
 誰かが解くのを待ってても良かった筈じゃないか。
 例えば・・・、俺達とかが」
「・・・!!」
「確かにそこは・・・言われてみればそうだな」
「遺言状が見られる、と言う事で考えなかったが・・・」
「・・・そこは関係無いだろ!一日も早く欲しかったんだよ!
 それとも他に理由があるとでも言いたいのか!?」
「もちろん」
「何!?」
「その理由は・・・、何だと?」
「この件に関しての発言権を得る為・・・ですかね」
「・・・!!!」
「その証拠に、真壁さん達は二度も遺言公開を延期させた。
 ・・・が。皆さんはそれに従わざるを得なかった。暗号を解いてくれた人に逆らえなかったからです。
 違いますか?」
「それは・・・確かに・・・」
「そんな事は結果論でしょう。あなたは、結果論に難癖をつけているだけじゃないですか」
「だが、それを事前に推測する事は出来る筈だ。
 そして当然、そこを利用出来る、って事も推測出来る筈」
「・・・!」
「まあ、確かにこれだけでは結果論に難癖をつけているに過ぎない。
 だから、ここからが問題になって来る」
「・・・と、言いますと?」
「この暗号・・・、実は俺も解読しましてね。正解に辿り着きました」
「え!?」
「遠野さん・・・、あなた・・・」

キクさんが睨んでいる。そりゃそうだ。
そんな理由で借りたんじゃないんだからな。

「お叱りは後でいくらでも受けます。まずは俺の話を最後まで聞いて下さい」
「・・・良いでしょう」
「では遠野さん。あなたも正解に辿り着けたのなら、答えを言ってみて下さい」
「出来れば・・・、解読方法もお願いします」
「分かりました。
 ・・・この暗号は、俺もかなりてこずりました。卑怯なくらい、何重に罠が仕掛けてある」
「と言うと?」
「まず、解き方ですが・・・・、アルファベット変換法になります」
「え!?それは私達も試しましたが、まともな言葉になるのは『JUSTICE』くらいで
 それは不正解でしたよ?もちろん、言葉にならない字の羅列も確かめましたし」
「確かに。それは俺も引っ掛かりました。
 実は、解き方はそれだけじゃないんですよ」
「はい!?」
「この暗号・・・、10と19の間に妙な字間があるでしょう」
「そう言われれば・・・」
「見た時はただの書き方だと思って気にしなかったけど・・・」
「これこそが、この暗号を解くもう一つの鍵だったんです」
「と、言いますと・・・?」
「この数字をアルファベット変換法で置き換える。
 そして『JUSTICE』と言う単語が出す。ここまでは合ってますが
 ここから更に、この空白を入れる必要があるんです」
「・・・!」
「空白を!?」
「どこにですか?」
「『JUST』と『ICE』の間です。
 つまり正解は・・・『JUST ICE』になる訳ですよ。
 そうですよね、真壁さん?」
「・・・合ってます」
「そんな言葉が正解だったとは・・・」
「この暗号の巧妙な所は、裏を何度もかいている点にあります。
 最初にアルファベット変換法でやってみて違うと思わせ、じゃあこのやり方では無いと考えさせる。
 更に、既存の言葉でも無い、とも考えさせる。 そうやって、『JUSTICE』と言う言葉から離れさせる。
 『JUSTICE』と言う言葉を出す事が解読の第一歩なのに、です」
「そんな事をしていたとは・・・」
「さて、後は簡単です。ここに・・・、この空白を入れれば良い。
 が。まず空白を入れると言う事自体が思いつきにくい。
 こんな字間に何か意味があるとは普通は考えないでしょう。
 この中に、この字間に着目出来た人はいますか?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「つまり、ここでもまた裏をかいているんです。何気ない物にも、しっかりと意味を持たせる事で。
 しかも、ここまでの引っ掛けで既存の言葉を使う、と言う事から離れてしまっていますから
 空白を入れる事が思いつけても『JUSTICE』に入れるとは、なかなか思かえない」
「なるほど・・・。ここまで何重にも引っ掛けをしているとは・・・」
「遠野さんは、どうしてそこに気付けたんですか?」
「星野が氷をかじっているのを見ましてね。そう言えばこの暗号は『ICE』と言う単語が出せるな、と。
 ちょうど空白に注目してた時だったんで『ICE』」で切ってみたら『JUST』が残った。
 ・・・あれ、それって『JUSTICE』に空白を入れる事で出来るモノじゃないか、と
 そんな風に考えたら出来たんですよ」
「・・・遠野さん」
「はい?」
「確かにあなたのやり方は正解です。私も偶然、字間に気が付きまして
 『JUSTICE』にアレコレと空白を入れて試し続けた所、上手く行ったんです。
 三日もかかりましたが」
「ほう?」
「ですが、ただ解読に成功して正解を出せた、と言うなら
 そんな事には何の意味もありませんよ?」
「分かってますよ。正解なら、とっくにアンタが出してるんですからね」
「ええ」
「ですから、俺の言いたい事は別にあります。
 真壁さん。そして和馬さん。アンタらの本当の狙いについてです」
「・・・!!!」
「ほ・・・、本当の狙い!?はは、お前何言ってんだ?
 俺は遺産を貰いたい。他に何があるってんだ!?」
「遠野さん。どう言う意味なんですか?」
「さっきも言ったように、遺言状に遺産の分配方法が書いてあるとは言え
 和馬さんがそれなりに貰えるとは考えにくい。
 もちろん、貰えるかも知れない。しかしそれは可能性的には低い。
 では何を企んだかと言うと・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「遺言状を書き換える事を考えたんですよ」
「!!!!!!」
「な・・・!!!」
「何だって!?」

全員が驚いてる。
特に真壁と和馬が、とんでもなく驚いてるのが分かる。

「遺言状の書き換え・・・!?何の為にそんな事を?」
「もちろん、自分にも遺産がそれなりに回ってくるように、ですよ。
 内容を書き換えてしまえば、それは可能になる」
「なるほど・・・。確かに」
「その為には、遺言公開までにスキを作る必要があった。
 考えてみて下さい。真壁さん達は、二度も公開を延期している。
 あれは何故だと思いますか?」
「さあ・・・?」
「俺達がいたからですよ。特に二度目です。金庫の警備をしていたでしょう。
 あれにより、書き換えるスキが無くなったからです。
 最初の、親族全員が集まり落ち着いてから、と言うのは百歩譲って良いとしましょう。
 が、二度目は明らかにおかしくないですか?何故急用が出来たんです?」
「それは・・・、俺も色々と忙しいからだよ!別に良いだろ!」
「それならどうして、俺達に警備を続行させなかったんです?
 別に俺達は構わなかったんですよ?」
「・・・そこは、私達が本職の警備の方を呼んだ方が良いと判断したからです。
 延期になったのはこちらの問題ですから、その責任を取る意味でも」

・・・やっぱりそう来たか。まあここも想定内だ。

「なるほど。まあ正論ですね」
「遠野さん。あなたが言っている事は、完全に憶測・・・、いや、妄想でしかないですよ」
「おや、手厳しい事を言ってくれますね」
「だってそうでしょう。遺言状を書き換えるとか・・・
 私達がそんな事をした証拠でもあるんですか?完全にあなたの想像じゃないですか」
「証拠なら、ありますよ」
「・・・!?」
「実は先日、この部屋に監視カメラを仕掛けさせて貰いましてね」
「な・・・!!!」
「ああ、ちゃんと美幸さんの許可を貰いましたよ。勝手にやった訳じゃありません」
「くっ・・・!」

明らかに二人とも、焦った顔をしている。

実は俺は、アキラの所に行った帰りにまた事務所に行き
小型の監視カメラを持って来たんだ。

そして椎名家に戻り・・・、監視カメラを仕掛けた訳だ。

「これが、その監視カメラです。小さいでしょう?
 こんなのがあるとは予想も出来なかったんじゃないですか?」
「・・・・・・」
「で・・・、これがその監視カメラで録画した映像のDVDです。
 昨夜、お二人が金庫室に来て金庫を開けて何かしている所が映っていますよ」
「そんな事をしていたとは・・・」
「いつの間に・・・」
「どうですか真壁さん?これは立派な物的証拠じゃないですか?」
「それはどうですかね」
「・・・ほう?」
「確かに、私と和馬さんは金庫室に行き、金庫を開けました。
 ですがそれは、あくまでも中を確認する為であって
 内容を書き換えたですとか、そんな事はしていません」
「はは、そう来ましたか」
「内容を書き換える、なんて現実性が全く無い。そんな事どうやるんですか?
 筆跡鑑定でもすればそこはすぐに分かるでしょう」
「そこは問題無いですよ。遺言状はROMに記録されてますからね」
「な・・・!!!」
「まさか遠野さん・・・、金庫を開けたんですか?」
「ええ、開けました。やらないといけない事があったもので」
「何ですか?」
「まあ、そこは後で。
 とりあえず今は・・・、遺言状がROMである訳ですから
 内容を書き変える事は可能だと言う事です。筆跡鑑定なんか関係無いですから」
「・・・そんなことは前もって分からないでしょう。
 紙に書かれた物かも知れない。いや、普通はそう考える筈です」
「それなら、ROMを置いておけばそれで通りますよ。
 今まで散々、暗号だのROMだのとやって来たんです。
 最後に遺言状もROMだった、と来ても別に違和感等は感じないでしょう?」
「まあ・・・、確かに」
「・・・そこはそれで良いとします。が、やはりあなたの話は妄想に過ぎない。
 私達が書き換えたと言う証拠は無い」
「ははは、往生際が悪いですね。まあ、その辺りも想定内ですが」
「・・・何ですって?」
「アンタは、大事な事を忘れている」
「どう言う意味です?」
「じゃあお聞きしますが、何で俺がわざわざ暗号を解いて金庫を開けたと思います?
 別に推理を話すだけなら、暗号を解く必要も金庫を開ける必要も無いでしょう」
「・・・!!」
「何か意味があるんですね?教えて下さい遠野さん」
「・・・では。
 ちょっと遺言状を見せて貰っても良いですか?」
「それで何か分かるとでも?」
「ええ。良いですか真壁さん?これがさっきのアンタの言葉の反論になるので」
「・・・私は構いませんよ。みなさんはどうですか?」
「まあ、別に・・・」
「どうせ見るんだしな・・・」



こうして金庫が開けられ、中の遺言状が出された。

ROMはパソコンに入れられ、中の文章が公開された。

「さて、遠野さん。これがどうしたんですか?」
「どんな事が書いてありますか?」
「まあ・・・ざっと見た所、会社の人事についてでしたり
 遺産の分配方法についてですね」
「和馬さんはどれくらい貰えると書いてありますか?」
「・・・それほど多くはありません。約10パーセントだそうです」
「では、決まりですね」
「は?」
「あなた方は、遺言状を書き換えている。それが今、立証されました」
「・・・何をおっしゃっているんですか?まさか、和馬さんも貰えるから、などと
 馬鹿げた事を言い出すつもりじゃないでしょうね?」
「いえ、そんな事じゃありませんよ」
「では何ですか?」
「星野。ROMを開いてから何分経った?」
「・・・2分40秒です」
「では、後20秒待って下さい。いや、もう10秒くらいかな?」
「・・・?」



5、4、3、2、1・・・ゼロ!

ピーーーーー・・・・・・

「何だ!?」
「パソコンから音がしてるぞ・・・?」



-All date deletion-



「データ消去!?どう言う事だ?」
「遺言状が・・・白紙状態に・・・!!」
「ま、こう言う事です」
「・・・・・・」

真壁が怖い顔で考えている。

「・・・偽物か!!!」
「大正解。実は昨日の夜、アンタ達がすり替える前に俺が先にすり替えたんです。
 専門家に頼んで作って貰った、内容を変えたら開いて3分後にデータが消える、と言うウィルスを仕込んだ
 偽の遺言状ROMにね」
「・・・!!!」
「じゃあ、遠野さんが金庫を開けたのは・・・」
「ええ。この罠を仕掛ける為です。そして・・・」
「!!!」
「これが本物。金庫の中から取り出した遺言状です。
 これの中身を確認してみて下さい。内容には、和馬さんの分配については
 ほとんど書かれていません。
 つまり・・・、中身を書き換えた証拠になる訳です」
「遠野さん・・・。あなたが持っているそのROMが本物とは限りませんよ。
 私達を罠にかける為にやったのかも知れないでしょう」
「ご心配なく」
「・・・!?」
「このROMには・・・、ちょうどここ。穴の開いている所に指紋が付いてるんです。
 見えますか?」
「・・・言われてみれば確かに」
「これは、お祖父さんの指紋です。生前、付けておいたんでしょう」
「・・・!と言う事は!!」
「ええ。これが本物である事の『物的証拠』です。
 信じられないのであれば、顧問弁護士さんに連絡して確認して良いですよ。
 そちらの方に、以前採取した指紋のデータが保管してあるそうです」
「・・・・・・」
「『何で指紋なんかが付いているのを知っているんだ』。
 そう言いたいんじゃないですか真壁さん?」
「ええ・・・」
「本物の遺言状に書いてあるんですよ。それが『本物』の証明になるように、ってね。
 勿論、偽物の方のは消しておきましたけど」
「・・・はは。やられましたね。お見事です。完敗ですよ」
「それは・・・、自分のやった事を認める。そう言う意味だと解釈して良いんですか?」
「はい。私は、和馬さんに頼まれて遺言状を書き換えました。
 和馬さんにも遺産が分配されるように、ね」
「真壁さん・・・!!!」
「和馬・・・、あなた!!!」
「・・・くっ!!」

和馬は観念したのか、逃げ出す訳でも無く悔しがっている。

「まさか・・・、気付かれるとは思いませんでしたよ」
「疑りぐり深い性格なもんで。不審な点があれば、いろんな事を考えちまうんですよ。
 で、この説であれば一番しっくり来る・・・なんて考えて色々やったら
 本当にそれだった、ってとこです」
「・・・そうですか」
「まあ、あんたが迂闊極まりないせいもあったんですよ。
 何度か言いましたが、不審な点が多過ぎた。だから怪しまれた。俺に。
 本気で成功させたいなら、そう言う他の所にも気を付けるべきなんです」
「・・・勉強になります」
「ただ」
「?」
「あんたとしては・・・、別に私利私欲の為に和馬さんに協力した訳じゃない。
 違いますか?」
「・・・!!」
「遠野さん、どう言う意味ですか?」
「和馬さんが真壁さんに協力をお願いした時に・・・
 まあ、お礼ははずむ。そんな事を言った。そうじゃないですか?」
「・・・はい」
「が、真壁さんとしては、別にお礼の為にここまでやった訳じゃない。
 そうじゃないんですか?と言ってるんですよ」
「・・・その理由は何ですか?」
「遺産の分配を等しくしてないからですよ」
「・・・!!!」
「どう言う・・・、事でしょう?」
「遺産を遺族全員で分配するのであれば、ふさわしい割合で分けるのが普通です。
 長男に何パーセント、次男には何パーセント、と言うようにね」
「まあ、そうですね」
「ところが、真壁さんが書き換えたモノ・・・、まあ消えてしまいましたが
 さっきの内容には、和馬さんには10パーセントしか分配されていない。
 四人で分けるのであれば、25パーセントずつにも出来る筈です。
 それを、3人で30パーセントずつ。残りの10パーセントを和馬さんにしていた」
「それは・・・、そうした方が怪しまれないと思ったからですよ。
 下手に和馬さんに多くすると、不審に思われるでしょう」
「いいや、それは無いです。ここまであんたを信頼する状況が出来上がっていれば
 怪しまれる事はまず無い。それが『決定』だと通す事も出来た筈です。
 あんたは、それを敢えてやらなかった。
 それは・・・、あんたの最後の良心だったんじゃないんですか?
 完全な悪者に徹せない。ほんの一欠けら、良心を残さずにはいられなかった。
 そうじゃないんですか?」
「・・・証拠は?」
「ありませんよ」
「え?」
「ただの勘です。そうじゃないのかな、って言うね」
「そうですか・・・」
「まあ、あんたは全ての罪を認め・・・
 言い訳なんかしないで罰を受け入れる為に、そこで白をきる。
 俺はそんな風に考えているんですけどね」
「・・・そうですか。まあ、それとは関係無く、私はそんなつもりでやった訳じゃありません」
「それならそれで良いんですけどね」
「ただ」
「はい?」
「私は以前、和馬さんに助けを求められた事がありましてね」
「ほう」
「それ以来、何度か和馬さんの力になっていましたが
 このままじゃいけない。和馬さんにも自立して欲しい。
 ある事をきっかけに、これで縁を切って・・・、その為にはお金が要るし・・・
 などと考えていた事は事実ですけどね」
「それは・・・、そう言う事って意味ですかね?」
「はい。
 ・・・そう言う意味です」



そして俺達は無事に依頼を終え、帰る事になった。

「ありがとうございました、遠野さん。星野さん。
 あなた達ににお願いして良かったです」

美幸さんが何度も頭を下げて礼を言っている。
ここまで感謝されると、何か照れるな。

「事情を知らなかったとは言え・・・、失礼な事を言ってしまって申し訳ありません」
「いや・・・、とんだ失態でした」
「面目ありません」

椎名家の全員が俺達に礼を言ったり謝ったりしている。
まあ、今回はそれほど大きなヤマだったからな。

「キクさん。和馬さんと真壁さんはどうするつもりなんですか?」
「それは・・・、これから決めて行きます。まだ分かりません」
「そうですか。ただ・・・、本物の遺言状にも書いてありましたが・・・」
「分かっています。和馬が自立出来るようになったら、その時は力を貸します。
 そしてその時の為に、和馬の分の遺産も保管しておきます。
 それがあの人の望みでもありますから」
「真壁さんも・・・」
「はい。あの人は根っからの悪ではない。それも分かっていますよ」
「そうですか」
「ただ・・・、今回やった事は事実ですから、それに対しての罰は与えるつもりですが」
「はは、厳しいですね。ですが・・・俺もそれが正しいと思います」
「ありがとうございます。
 ・・・ところで、遠野さん」
「はい」
「今回の報酬ですが・・・、お礼の意味も含めて
 あなた方の言い値でお支払いしようと思うんですが・・・。
 お望みとあれば、いくらでも・・・」
「結構ですよ。最初に美幸さんに提示した値で構いません」
「しかし、それでは・・・!」
「ま、俺達も策略を暴く為とは言え、大分勝手な事をしましたからね。
 それで貸し借り無しとしましょう」
「宜しいんですか・・・?」
「ええ」

そして俺達は・・・
タクシーを呼んで貰い、事務所に帰った。

色々あったが、何とか今回も解決出来た訳だ。



「ただいまー」
「あ、おかえりなさいユキさん!」
「はは、良いタイミングだな。俺達もさっき帰って来たんだぜ」
「あら、そうなの?何か手こずってたみたいだけどどうなったの?」
「もちろん解決したぜ。お前が帰って来る前にな」
「言ってくれるわねー」
「お前も何か面倒な事になってたみたいだけど、結局どうなったんだ?」
「もちろん。私も解決してみせたわよ。
 ・・・まさとに助けられちゃったけどね」
「へー?何気に凄いんだな、まさとさんも」
「ま、その話は後でね。ハイお土産。牛タンと萩の月だよ」
「お、悪いな」
「ありがとうございます!」
「ねえねえ、ちょっと報告書見せてよ」
「え、まだ途中だぜ」
「経過だけでも知りたいから」
「ま、良いぜ。ほら」
「・・・・・・」
「・・・どうだ?」
「へー、ここ最近じゃ珍しいくらい大きなヤマだったんだね」
「まあな」
「ジュンさん、報酬を言い値で支払います、って言われたんですけど
 それを断って最初に提示した金額しか受け取らなかったんですよ」
「ああ、それは当たり前じゃない」
「え!?」
「あら、どうしてジュンがそうやったか分からないの?」
「・・・分からないです」
「お前は分かるんだろ?」
「椎名家に貸しを作っておく為でしょ?」
「ま、そーゆー事だ」
「え!?でもさっきジュンさんは、『これで貸し借り無しにしましょう』って
 言ってたじゃないですか!!」
「逆よ。こっちの言い値で支払わせたら、それこそが貸し借り無しになっちゃうでしょ。
 そうやる事で、椎名家はジュンに対して貸しがあるままだと思っちゃうの。
 物的なモノじゃなく、心理的なモノでね」
「結局、椎名家はあれで貸し借り無しになったとは思ってないだろうな。
 俺は確かに勝手な事をしたけど、そのおかげで真実が見えた訳だ。
 つまり俺の勝手行為は『借り』にはならない。
 逆に、俺が真実を暴いたと言う点は『貸し』にしかならない。
 これで相殺される訳じゃ無い事くらい、向こうも分かってるさ。
 ちゃんと大人な考え方をしてるみたいだからな」
「はー・・・。凄いですね・・・」
「あーゆー金持ちとかには貸しを作っておいて損は無いからな。
 作れる時はどんどん作るさ」
「やー、したたかなもんねー」
「さーて、それじゃあ今度はお前の番だな。仙台で何があったか話して貰おうか?」
「あ、その前にアキラにご褒美あげてからね。あの子のおかげで罠にかけられたんでしょ?」
「まあな」
「じゃあ、ちょっと待っててね。
 まだ時間はあるし、のんびり行きましょ」
「ま、そうだな。お互い、一ヤマ終えた後だしな・・・」



ユキがいなくて大変だったが・・・。

久し振りにやり甲斐のあった・・・、いや、あり過ぎたヤマだったな。

平和な日も良いけど・・・
こう言う、やり遂げた後の達成感が何とも言えないんだよな。



『another story from jun』・fin

(↓下に、久遠からのお知らせがあります)



↓宜しければ押してやって下さい
     

どうも、御久し振りです。久遠です。
ある方に死んだと思われてしまいましたが・・・、生きてます。

えー・・・、完結編がこんなに間を開けてしまって
本当に申し訳ありませんでした・・・。
全然『近日公開』にならなくってすいません・・・。

まあ、ちょっと・・・また体調をおかしくしてしまい・・・。

以前から、少しずつ書いてはいたんですけどね。
最後まで書き切るのに、とてつもなく時間がかかってしまいました。



さて、番外編は今回で終了です。

次回は、ちょっと総集編をやります。

『真実』編の今までを、思い出して欲しいな、と思いまして・・・。
本編再開の前に、これまでを振り返ってみて下さい。
忘れてしまっていると分からない事が多々出て来ますので・・・。

まあ、私が悪いのですが・・・。

本編再開は、総集編の後になります。
あとちょっとだけ待ってて下さい。

ちなみに『BE ALIVE!』、モバゲーの方に出張版を連載中です
(書いてるのは私じゃなく友人にコピペして貰っているんですが)。
いや、ちょっとそっちの人達にも読んで欲しいなあ、と。

そちらでは現在、『treasure』編の真っ最中です。
内容は全く同じですが、ちょこちょこと修正したりしてるので
モバゲーをやっていて興味のある方は見て下さると嬉しいです。
ついでにファン登録とかして頂けると・・・。
つか何かこっちより一日のアクセス数が多いんですよね・・・(苦笑)。

作品検索で『BE ALIVE!』でやれば、一番上に来る筈です。
複数出ますが、ページがやたら多いのがそれですので。

では、また頑張りますので今後も宜しく御願いします!

久遠でした!!
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