第百五十話・番外編（another story from jun vol.5『decode』）

「キクさんからROMを借りて来た。もちろんパスが掛かってるがな」
「遠野さん。そろそろ、一体何をするのか教えて頂けませんか？」
「・・・美幸さん。少々申し訳無いんですが
　これからROMの暗号を解読します」
「え？そんな事をしてどうするんですか？」
「もちろん金庫を開けるんです」
「はい！？そんな事をしなくても・・・
　明日になれば遺言公開が行われるじゃないですか」
「その前にやらないと、いけないんです」
「どう言う意味ですか？」
「それは・・・」

俺は、自分の考えていた推理を美幸さんに話した。

「・・・和馬がそんな事をすると？」
「ですが、そう考えれば全ての辻褄は合います。
　何故、探偵を雇ってまで遺言状公開にこだわったのかが。
　いや・・・。もしかしたら真壁の方がそそのかしたのかも知れない。
　そこはまだ何とも言えませんが、試してみる価値はあると思います。
　その為には、美幸さんの協力が是非とも必要なんです」
「・・・ですが、もしその考えが間違っていたら？」
「その時は、俺達の責任にして構いません。
　遺言状を守る為にやった、と言えば言い訳になるでしょう。
　それに、この考えには絶対の自信があります。
　さっき二人とも悔しそうな顔をしてましたから間違い無いですよ」
「・・・分かりました。私も遠野さん達を引き留めてしまったんですし
　それに乗らないといけませんよね。やります」
「ありがとうございます」



俺は、金庫の警備をマコトに任せる事にした。

「じゃあ、さっきも言ったけど、ここで警備をしてるだけで良いからな」
「分かりました。でも、遠野さんはどうするんですか？」
「俺は事務所に戻る。やらなきゃいけない事が色々とあるんでな」
「色々って何ですか？」
「とりあえず・・・、こいつの暗号を解かなきゃいけないしな」
「最初の答えは違ってたんですよね？
　明日までって・・・大丈夫なんですか？」
「ま、やるしか無いだろ。それに専門家に頼むし何とかなるさ」
「専門家？」
「アキラだよ」
「え！！」
「心配すんな。俺が一人でやるから」
「はあ・・・」
「じゃあ、頼むぞ。もし金庫の側を離れる時は美幸さんにいてもらえ」
「はい！」



俺は美幸さんに車を借り、一人で事務所に戻った。

「アキラの番号は・・・っと」

そう言えば、アキラを呼ぶのは『treasure』の一件以来だな。

『もしもし？』
「ようアキラ。ジュンだ」
『あれ、どうかしたんですか？』
「お前、パスワード解析プログラムって持ってたよな？」
『持ってますけど？』
「ちっとこれから使わせて欲しいんだが平気か？」
『こっちに来てくれるなら別に良いですよ』
「ああ、構わないさ。元々そのつもりだったからな。
　じゃあこれから向かうぞ」
『分かりました。・・・あ、ジュンさん』
「何だ？」
『ユキさんは・・・』
「・・・あいつなら、別の仕事やってるよ。手が離せないらしい」
『じゃあ、終わったら連絡するように・・・』
「分かった分かった」
『約束ですよー』

プー

・・・危ない危ない。
もし「いない」とか言ったらヘソを曲げかねないからな。
終わったら連絡させれば良いか。



そして俺は、今度はアキラの家に向かった。

「アキラ？俺だ」
「・・・・・・」
「アキラ？いるんだろ？」
「・・・・・・」

おかしいな。いない筈は無いんだが。

・・・！

「・・・ユキ・シバハラ」

ガチャ

「はーい、お待たせしました」
「お前、この合言葉まだ使ってたのか・・・」
「え、だって変えるって言ってないじゃないですか」
「・・・そうだな」
「ま、どうぞどうぞ。散らかってますけど」
「邪魔するぞ」

・・・・・・。

相変わらずサイバーな部屋だな・・・。

「で、どのパスを解きたいんですか？」
「ああ、これだ」
「じゃあお借りしますね」
「どのくらいかかる？」
「そうですね・・・。パスの種類にもよりますけど
　15分もあれば大丈夫じゃないかと」
「分かった。頼むぞ」



自分で解くのも考えたが・・・。

時間が限られてる以上、効率の良い方を選んだ方が得策だよな。



つづく



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