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様々な想いが交差する!3rdシリーズ『真実』編!!
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次の日。

今日はバイトなので、藤井さんに会う。

だから・・・、告白の返事を出す事にした。



大学が終わってから、バイトに向かう。
いつになく緊張していた。憂樹の時とは違う感じのドキドキが襲って来る



「おはよう、藤井さん」
「あ、おはようございます」
「・・・あのさ」
「はい?」
「今日・・・、終わった後に時間あるかな」
「え・・・」
「待たせちゃったけど・・・、返事を出すから」
「・・・!!」

藤井さんはさすがに驚いたらしく、声は出さなかったけど大きく目を見開いた。

「分かりました・・・。大丈夫です。じゃあ駐車場ででも待ってて下さい」
「うん・・・」



今日のバイトは、何故かいつも以上に短く感じた。

俺の答えは決まっていた筈なのに、腹はくくった筈なのに
どこかに、藤井さんに答えを出す事を拒否している自分がいた。

そんな気持ちが時間の流れを速く感じさせていたんだろう・・・。



いっそ、言わないでも終わってしまえば良いのに。



そんな、弱い部分が出てしまっていた。
それが出来るなら、どれだけ楽だろう。どれだけ助かるだろうと。


もっとも、それに負けてしまう事は無かったが。



そしてバイトが終わった。

遂に、この時が来てしまった。

今になってもなお、逃げ出したい気持ちがある。
必死でそれを抑え勇気を振り絞る。



「お待たせしました・・・」

私服に着替えた藤井さんが駐車場に来た。
俺がここに来てから、そんなに時間は経ってない。

「お返事を・・・、聞かせてくれるんですよね?」
「うん・・・」
「じゃあ・・・、お願いします」



俺は、ありったけの勇気を出して言った。



「俺は・・・、藤井さんとは付き合えないよ」
「・・・・・・」

意外にも、藤井さんは驚いた様子は無かった。

「ダメ・・・ですか」
「うん・・・。ゴメン・・・」
「理由を聞かせて貰っても・・・、良いですか?」
「藤井さんが嫌いとかじゃないんだ・・・。むしろ良い子だと思ってる。
 でも俺は・・・、もう好きになってる子への想いを捨てられない。
 色々と考えて、迷ったりもしたんだけど・・・。
 やっぱり切り替えるとか出来ないんだよ・・・。不器用だし・・・」
「・・・・・・」


藤井さんは、しばらく黙っていた。

泣き出しそうなのを、必死に堪えているようにも見える。



「やっぱり・・・、ダメでしたか・・・」
「え、『やっぱり』って?」
「実は私・・・、最初からそんな気はしてたんですよ。
 工藤さんは好きになった人の方を選ぶんじゃないか、って」
「・・・それならどうして?」
「あきらめ切れなかったのと・・・、奇跡を信じたかったのとです」
「奇跡・・・?」
「工藤さんは真面目ですし純粋な人ですし、告白されてもそっちに変わる事なんか無いだろうって
 告白する前から・・・そう思ってたんです。
 でも、私はもう工藤さんの事を好きになっちゃってたし・・・
 何もしないで終わるって言うのは悔しくてしょうがなかったんです。
 だから、当たって砕けろじゃないですけど・・・
 思いっきり砕ける為に、ですかね・・・。」
「・・・・・・」
「それに、もしかしたら、って言う最後の望みも託してましたし。
 奇跡が起こって私を選んでくれるかも、って言う希望があったんです。
 だから選ばなくても満足だって言ってたんですよ」
「・・・そうだったんだ」
「・・・本当に嬉しかったです。迷ってくれて。
 もしかしたら、って言う希望が湧いて来ましたし・・・。」
「何か・・・、何て言ったら良いのか・・・。
 ごめん、藤井さん・・・」
「謝らないで下さいよ・・・。別に工藤さんは何も悪くないんですから・・・。
 そんな迷わせるような事をした私が悪いんです・・・」

藤井さんは、だんだん震えて来て今にも泣き出しそうになっていた。



「あーあ、これで二回連続でフラれた事になっちゃった」

・・・涙を堪える為なのか、上を向きながら歩き始めた。

「三連敗は嫌だなあ。次は頑張らないと」
「・・・・・・」



・・・何も言えなかった。

何を言っても、藤井さんの悲しさを増すだけのような気がしたからだ。



「工藤さん」
「・・・何?」
「今、好きな人とはどうなんですか?順調ですか?」
「・・・まあまあ、かな。こないだ話した時と変わってないんだ」
「頑張って下さいね。応援してますよ」
「え・・・」
「だって・・・、好きになった人には幸せになって欲しいですから・・・」
「藤井・・・さん・・・」
「私をフッてその人を追い掛けるんですから、絶対に結ばれて下さいね。
 謝るくらいなら・・・絶対にそれをやり遂げて下さい・・・」

藤井さんはもう涙が出始めていた・・・。

俺は顔を見るのも辛くなっていたが、目を逸らしちゃいけない。
俺は、受け止めなきゃいけない・・・!

「じゃあ、またバイトで会いましょうね・・・」
「うん・・・」
「頑張って下さい・・・。じゃあ・・・」



藤井さんは、そのまま走って行ってしまった。



そして俺は、その場に座り込み
そばにあった車にもたれかかってしまった・・・。



いつだったか、亜矢子が言っていた・・・。

フる方も辛かったんだと・・・。



そこは何となく想像が出来ていたが、実感は無かった。
当たり前だ。人をフる経験なんか無かったんだから。告白された事自体が無かったから、



でも、今・・・。

言葉では言い表せないくらいの切なさが込み上がって来ている。

これが亜矢子の言っていた、人をフる切なさってやつか・・・。



こんなに切なく、悲しいモノだとは思わなかった・・・。



この切なさ、悲しさと、藤井さんの涙を無駄にしない為にも・・・
俺はもう、絶対に負けられない・・・!!!



つづく




     

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