第百八十四話・出ていた答え

「では、その答えを聞かせて下さい」



俺は、自分の答えが間違っていないと信じて話し始めた。



「俺は・・・、このまま憂樹と関わってても良いと思うんだ」
「なるほどね。まあ、それは構わないよ。でも問題はこの後だよね」
「で、そう思った理由だけど」
「はい」
「俺は・・・、強くなるのに憂樹が必要だから」
「・・・そう言う答えはダメだって言わなかったっけ」
「それは分かってる」
「じゃあ、まだ続きがあるの？」
「そう」
「それは失礼しました。続きをどうぞ」
「俺は・・・、色々と考えてみたんだ。本当に憂樹と関わって良いのかどうかって。
　秋山の言ってる事は、少なくとも間違ってはいない。
　それは憂樹も認めたよね。だから凄く迷った」
「うん」
「でも結局は・・・『憂樹が必要だから』って言う感情論でしかかんがえられなかった」

この『必要』って言うのは、強くなる為に必要と言う意味もあるけど
憂樹が好きだから・・・と言う意味もある。

もちろん、それを言える筈も無いが・・・。

「・・・まさと」
「はい・・・」
「それじゃ、結局答えは同じじゃない。続きがあるって言ったけど
　結論に至るまでの経緯を長くしただけでしょ」
「・・・それも分かってるよ。ここからが本当の答えなんだ」
「・・・分かりました」

憂樹が、俺の言葉にちょっと圧倒されたような表情を見せた。
俺も強気で言ってるが実は必死だから、そこが伝わったのかも知れない。



「で、俺は気付いたんだよ。難しく考える必要なんか無いんだって」
「・・・！」
「憂樹は・・・、俺との関わりを絶つ必要なんか無いって思ってるんだろ？」
「そうだよ」
「それは、憂樹が接し方をわきまえてくれているから」
「そうだね」
「それなら・・・、それで充分じゃないかって・・・
　俺が何かする必要は無いんじゃないかって」
「・・・あら」
「関わらない方が良いのか、そんな事は無いのか。
　俺は秋山の言葉に踊らされてたのかも知れない。気にし過ぎてたんだよ。
　そんな事、とっくに憂樹が答えを出してくれていて、とっくに対処してくれてた。
　憂樹のやってる事に全部乗っかるって言うのも情けないけど・・・
　じゃあ、俺には何が出来るのか。何も出来ないよ。無力だし何も知らないし」
「・・・・・・」
「俺が唯一出来る事と言えば・・・
　自分の気持ちに嘘をつかない事。憂樹がやってくれてる事が正しいと信じて
　それに全力で応えようと頑張るしか無いんじゃないかって」
「・・・なるほどね」
「どうかな・・・。結局、理屈としての答えじゃないかも知れないけど・・・」
「知れないどころか、感情論そのままじゃない」
「・・・・・・」

・・・やっぱりダメなのかな。

「ただ、まあ」
「え？」
「別に感情に流された訳でも無いみたいだからよしとしましょう」
「あ・・・」

良かった・・・。本当に良かった。

涙が出そうだったけど、必死で堪えた。

「私が言いたかったのはね、今まさとが言った事なんだよ」
「俺が・・・？」
「難しく考え過ぎてるって事」
「そう・・・なの？」
「まさとは何か勘違いしてたみたいだけど、私が言ってるのは感情に流されちゃいけないって事で
　それは『間違ってると分かってるけど流される』って事だよ」
「・・・あ！」
「多分、筋道を立てた理屈で説明しなきゃいけないって思ってたんだろうけど
　そこも考え過ぎなんだよ。私がもうやってるって話したでしょ？
　それなら、そこがもう答えになってるじゃない。
　確かに私に乗っかる形にはなっちゃうけど、そこは仕方ないよ。
　まさとが無力だとか何も知らないとかじゃない。私が何も話してないだけなんだから」
「憂樹・・・」
「まあ、そこに気付かないで『関わっちゃいけない気もするけど
　やっぱり必要だから・・・』なんて言ったら
　それは感情に流された事になってたけどね」
「うん・・・」
「ま、馨に言われて気にしちゃうのも分かるけど
　難しく考えてたら、答えが遠のく事もあるんだよ。
　たまには思い切って行動するのも必要だから、そこを覚えておきましょう」
「はい・・・」



そして俺は、今の憂樹の言葉を受けて・・・。



また一つ、答えを出す事を決めた・・・。



つづく




　　　　　

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